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日本画家、木村了子さんとの立ち話

お知らせ | 2019.11.21


≪伊勢物語八橋・龍田川屏風≫ 部分:在原業平 右隻 第9段「東下り」 
江戸時代(17世紀) 紙本着色 6曲1双 和泉市久保惣記念美術館蔵

日本画家の木村了子さんが、展示を見に来てくださいました。木村さんとは、 2017年度に 当館で開催した「今様」展以来のご縁です。最近では、新潟県燕市国上の国上寺(こくじょうじ)の「イケメン絵巻」の作者として名前が知られています。

 木村さんは登場人物をイケメン化して日本画を描いていますが、古典文学とイケメンについて展示中の≪伊勢物語八橋・龍田川屏風≫を見ながら立ち話をしました。『伊勢物語』に出てくる在原業平は、数々の浮名を流す王朝人。もとが色男なので、誰にも遠慮することなくイケメン化できます。しかし、主人公以外もイケメン化したら主人公が目立たくなるのでは?という疑問に対し、木村さんは「イケメンの群れ」という概念を導入し、登場人物の総イケメン化が可能だと説明してくれました。今日のアイドルグループのように全員がイケメンというのもアリということのようです。なるほどです。

 もともと物語絵の登場人物の多くは面貌(顔立ち)を「引き目鉤鼻」で表現されており、装束やポーズなどの面貌以外で人物が比定され、ストーリーと重ねあわせて鑑賞するのですから、面貌自体が顕在化される必要も無かったということに改めて思い至りました。面貌は鑑賞者の想像にゆだねるという奥ゆかしい(?)暗黙の決まりごとがあったわけです。

今日、仮に、木村さん流に主人公以外もイケメン化された「イケメン伊勢物語絵」なるものが出現しても、各人の身分や職業が明確なら、物語の理解にさしさわりは無いと思います。面貌の顕在化で人物のキャラクターがより明確になるため、想像をめぐらす余地が少なくなるのはさびしい感じもしますが、「イケメン伊勢物語絵」が出現したらやはり見てみたい気がします。