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館長室の窓から <11> を更新いたしました

館長より | 2019.12.02

今年度の特別展は4月に開催した浮世絵の「女・おんな・オンナ」展にはじまり、大倉陶園の「華めく洋食器」展、沖縄の「美ら島からの染と織」展と続き、11月24日に、久保惣記念美術館所蔵の「日本・東洋 美のたからばこ」展が無事におわり、来月から展観する「サラ・ベルナールの世界展」を残すのみとなりました。
いずれもそれぞれ、特徴のある内容をもった展覧会で、展示をご覧いただいた方々には好評でありました。そうした各展覧会の評判については会期中、毎回おこなっているアンケートからもうかがうことができました。

「女・おんな・オンナ」展での最大の目的は、浮世絵にあらわされた女性の一生のくらしに焦点を当てた内容の企画であり、これはおそらく初めての試みであり、新鮮味にあふれた展覧会であったと思っています。とくに、数々の春画の名品を取り揃えてズラリとならべた特別陳列室はそのめずらしさも手伝って、いちだんと賑わっていたのが印象的でした。

次の大倉陶園製の高級洋食器を飾った「華めく洋食器」展は大倉孫兵衛、和親親子が大正8(1919)年に創窯し、その後の洋食器制作のリーダーシップを担い続けて今年でちょうど100年をむかえた記念展でした。それらの陶磁器は皇室を筆頭に、ホテルやレストランなどに納入され、今日においても、わが国の洋食器といえば大倉陶園というほどに人々のあいだに膾炙しているやきものです。白磁の器体にさまざまな技法を駆使して焼造された作品は、じつに優美な雰囲気を漂わせており、実用品とはいえ、ある種の美術品を思わせる力を見せているといってよいでしょう。
洋食器という性格上、観覧者の多くは、ほぼ女性で終始しましたが、日本人の感性をもって洋食器づくりに挑んだその精神や成果をしっかり学んでいたようです。

夏におこなった「美ら島からの染と織」展は夏の時季に相応しい展示会であったと思います。南国で染められ、織られ、そして飾られた染織品はきわめてユニークな意匠を以て創作されており、観る者に深い感銘をあたえてくれました。
そして、このたびの展覧会でなによりも注目される点は、わが国でこれまで開催されてきた沖縄の染織展とは異なり、作品をほうぼうから集めるのではなく、すべて沖縄から作品を借用し、さらに展覧会構成、作品の選択、執筆などいずれも当地の先生方にお願いした沖縄オンパレードのこうした企画は他に類をみない試みであったと思います。しかも、これまで沖縄において、このように沖縄の染織を一堂に会した大規模の展覧会は今日まで沖縄で開催されたことがないということを聞き、このことを以てしても、この展覧会はいたって意義のある展観であったといえるのではないかと思っています。

秋には37年ぶりに東京へ、というキャッチで、和泉市にある久保惣記念美術館所蔵の「日本・東洋 美のたからばこ」展を開催しました。久保家の代々の方たちが収集した国宝・重要文化財31点のうち、国宝2件、重要文化財23件を展示したたいへん贅沢な展覧会で、天下一品の国宝・青磁鳳凰耳花生(銘万声)や重要文化財の宮本武蔵筆の枯木鳴鵙図など、世に喧伝された名品が一斉にならんでいる光景はみごとなものでした。
かつて、このコレクションは東京国立博物館で公開されたことがあり、弊展はそれ以来の展示ということでした。期間中、あいにくの雨が続いたり、即位の祝福パレードの行事、また台風の襲来などがあったにもかかわらず、多くの来館者に恵まれることができました。
この展覧会で目立ったこととしては、男性の入館者がひときわ多く見受けられ、熱心に一点一点を静かに見入っていた姿が心に残りました。

いよいよ今月には、19世紀~20世紀にかけ、女優また、芸術家として一世を風靡したサラ・ベルナール展を12月7日から開催しますので、ご期待ください。