瀧口修造は明治36(1903)年に富山県で生まれ、上京後の1920年代後半にシュルレアリスムの洗礼を受けて、詩作や翻訳などの執筆活動を始め、1930年代には美術評論家として活躍した。戦前の詩作は、戦後の1967年になって初めて「瀧口修造の詩的実験1927-1937」と題されて刊行されている。昭和54(1979)年に東京で没するまで、瀧口は詩、美術、映画、写真、舞踏、音楽、デザインなど幅広い分野の前衛的な仕事を見守り続け、独自の批評活動を行った。
一方で、1959年頃より、彼はデッサンに没頭し始め、「書くことと描くこと」の原点をたどろうという情熱にかられる。瀧口はオートマティックなデッサンだけでなく、バーント・ドローイング(焼きこがし)やデカルコマニー(転写技法)、ロトデッサン(器械の回転運動により多重円を描く)など、さまざまな技法の実験を行っている。それらの一部は、個展で発表する一方、親しい友人たちへの贈り物として捧げられたのだった。
瀧口の言葉によらない表現行為は、これまで断片的に知られていたに過ぎない。本展では瀧口没後に故・瀧口綾子氏が保管されていた膨大な詩人の遺品の中から、未発表作品を含む約350点のデッサン、デカルコマニー、バーントドローイング、手作りの本、オブジェを選び出し、著書、資料などを加えて、その全貌を紹介した。
瀧口の造形的実験に寄せる情熱、表現の発生を確かめようとする意図、詩や美術評論と造形物との関連など、展示からさまざまなものを読み取っていただけたことは、アンケート、新聞各紙のレビュー、観覧者の声などからうかがうことができた。
展覧会情報
会期 | 2001年12月4日(火)~2002年1月27日(日) |
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入館料 | 一般300円 小・中学生100円
※65歳以上の方及び障害者の方は無料 ※第二、第四土曜日は小中学生無料 |
休館日 | 月曜日、祝日の翌日、年末年始 |
主催 渋谷区立松濤美術館 |
展覧会図録
完売