20世紀写真の探索 写真のモダニズム/ジャポニズム

石田喜一郎とシドニーカメラサークル

2002年7月23日(火)~2002年9月8日(日)

石田喜一郎は長い間は忘れられていた写真作家である。平成10(1998)年に当館で開催した写真展「写真藝術の時代―大正期の都市散策者たち」展で紹介したのは、石田作品が約50年ぶりに公開された機会であった。その折に石田の現存する全写真作品がご遺族のご厚意により当館に寄贈された。以後、調査を重ね、彼が写真作家としての自己を形成したオーストラリアの近代写真史の調査も行ったうえ、本展が実現した。
石田喜一郎(明治19(1886)年-昭和32(1957)年)は秋田県に生れ、上京して大倉組の社員となり、貿易の仕事に従事して大正8(1919)年にシドニーに渡った。この地で鍵山一郎と出会い、写真の手ほどきを受けた石田は、写真による芸術をめざして制作に没頭する。
当地で最も先鋭的な活動を行っていた写真家集団は、シドニーカメラサークルであった。オーストラリアの近代を代表する写真家ハロルド・カズノーを中心に、メンバーは推薦制をとって、新しい芸術的写真を目指すための主導的な展覧会、相互批評による例会を主な活動としたグループである。石田はそこに唯一の非白人として迎えられ、シドニーの写真界の話題をさらう秀作を次々と発表し、ロンドンサロンをはじめ各種の展覧会で活躍した。
大正13(1924)年に関東大震災後の東京に帰国した石田は、日本の写真界とはいかにも異質な、乾いた明るいタッチの作品を発表し、大きな反響を呼び起こす。石田流の明るいブロムオイル印画は、一時、日本中を席捲するほどの大流行となった。福原信三の率いる日本写真会に迎えられ、会の重鎮となった石田は、日本の風景を相手に試行錯誤を繰り返しながらその後も制作を続けた。なにげないなかにも大胆に単純化した画面と大きな余白に彼の到達した境地がうかがわれる。
本展は石田の故郷にほど近い秋田県立近代美術館と、写真家としての故郷であるシドニーのミュージアム・オブ・シドニーに巡回した。

展覧会情報

会期 2002年7月23日(火)~2002年9月8日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※65歳以上の方及び障害者の方は無料
※毎週土曜日は小中学生無料
休館日毎週月曜日
主催 渋谷区立松濤美術館
後援 オーストラリア大使館
展覧会図録

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完売