渋谷区制70周年記念

友好都市ゆかりの美術展

―黒田清輝・東郷青児・菱田春草・郷倉和子など―

2002年9月24日(火)~2002年10月6日(日)

本展は、区制施行70周年を記念して、渋谷区と友好関係を結ぶ6都市の協力を得て開催された。
鹿児島市からは、日本の洋画界を代表する黒田清輝ら鹿児島出身の作家の作品を中心に、鹿児島の象徴ともいうべき桜島を描いた作品、薩摩焼や薩摩切子の伝統を受け継ぐ工芸品、近現代の西洋美術などさまざまな分野の作品が出品された。そして、いまや渋谷の象徴ともいえる忠犬ハチ公の像(現在は二代目)の初代銅像を制作し渋谷区に在住していた彫刻家・安藤照(鹿児島市出身)による、初代ハチ公像の塑像も出品され、好評を得た。
秋田犬であるハチの出生の地・大館市からは、当時盛んに行われていた伝統行事「闘犬」に興じる人々を描いた福田豊四郎《闘犬の日》が出品された。反官展の青龍社に属しながら、帝展に出品し続け、戦後の新しい時代に反応し、生涯新しい日本画の可能性を追求した福田だが、その根底に流れるのは、故郷秋田の風土であり、詩情あふれる素朴な作品世界を創出している。
飯田市からは、出身作家であり、晩年を渋谷区で過ごした日本画家・菱田春草の作品が展示された。
渋谷区も通る玉川上水の源流である羽村市からは、出身作家・並木恒延氏の漆画作品が出品された。「漆で絵を描きたい」という出発点のもと、金粉や貝、卵の殻などを多用した蒔絵や螺鈿などの伝統的手法による作品世界からは、漆の美しさを極限まで引き出し、幻想的で時間を閉じ込めたような漆黒の空間のなか、絹をまとっただけの裸身の女性の息使いが、聞こえてきそうである。
戦時中、学童疎開先として渋谷区の児童を受け入れた小杉町からは、親子ともに日本芸術院会員である郷倉千靭、和子の作品が出品された。千靭は、花鳥画や、仏教に取材した大障壁画で有名であり、小杉焼など伝統工芸の復興にも尽力した。その子・和子は、一貫して花鳥に美を求め、近年では特に厳寒に咲く梅を題材に、心象風景ともいうべき作品を発表し、女流画家として美術界を牽引する一人である。
また、地名の由縁で友好関係を持つ神泉村は、冬桜や三波石など名勝の地で知られ、夏季に当地を制作拠点とする画家・堀越千秋による、村を流れる神流川の景色を描いた作品が出品された。その鮮やかな色彩の流れは、強い色が大胆に多用されているにもかかわらず、決して濁ることなく力強く表現され、この清流のとうとうと流れる美しい様を表現している。
なお、本展は友好展により、入館無料であった。

展覧会情報

会期 2002年9月24日(火)~2002年10月6日(日)
入館料無料
休館日毎週月曜日
主催 渋谷区立松濤美術館
協力 鹿児島県鹿児島市 秋田県大館市 東京都羽村市 長野県飯田市 富山県小杉町
   埼玉県神泉村
併催 特別陳列 岸田麗子展
展覧会図録

展覧会図録

価格:1,000円

購入する