上海博物館展

―中国文人の世界―

2003年6月3日(火)~2003年7月13日(日)

No Image

中国には、文人とよばれる知識階級がいた。文人とは文房(書斎)にいる人という意味であったが、次第に、文徳の人、つまり、学問徳行に優れた人ということになり、さらには、芸術的な風雅さを備えた人を文人と称するようになる。
明代中期を代表する文人に文徴明(文明2(1470)年-永禄2(1559)年)がいる。経済的に発展を遂げた江南の蘇州の文化を代表する人であり、その円満で篤実な人柄によって蘇州の文人たちの中心となった。今回出品された「真賞斎図」は文徴明の友人で収蔵家として知られた華夏の書斎「真賞斎」を描いたものである。松や竹などの樹木、太湖石に囲まれた三間の茅屋、中央の屋内で机に向かい巻物をひろげているのが華夏である。机上には各種の文具が置かれ、左の屋内には書籍や画巻などが積まれ、右の別室では侍童が茶の支度をしている。明代中期の文人の優雅な生活環境を想像する事ができるであろう。図の後には文徴明が華夏のために作った「真賞斎銘」の一文が彼の性格を示すような楷書で書かれている。そして、この図には『乾隆御覧之宝』をはじめとして多くの鑑蔵印(所蔵者が押した印)が押されているが、これもまた、文人たちの間における美術品収蔵の趣味を示すものである。
この展覧会では、こうした文人たちが居住した生活空間である書斎や園林を描いた作品をはじめとして、そこでの雅な集い、また理想とした脱俗の生活を物語る山水図、彼らの高潔な精神を植物に託して画いた墨竹図や墨梅図、文人たちの間での詩文の応酬をものがたる書蹟などのほかに、彼らの書斎に彩をそえた各種の文房具、そして彼らの趣味生活をものがたる琴や茶具など91点を、中国を代表する美術館のひとつ上海博物館所蔵の名品の中から選び陳列した。
上海博物館の所蔵。
品は毎年のように日本で展示されているが、その多くは羅列的な名品展であった。今回の展示は文人たちの生活、思想を考えるという一つの主題にそって作品を選び出した。本展を通して、中国文人の理念を感じ取り、長い中国文化の伝統の本質に近づいていただけたものと思う。

展覧会情報

会期 2003年6月3日(火)~2003年7月13日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※65歳以上の方及び障害者の方は無料
※毎週土曜日は小中学生無料
休館日毎週月曜日
主催 渋谷区立松濤美術館 読売新聞東京本社 美術館連絡協議会
後援 中華人民共和国大使館
協賛 花王株式会社
展覧会図録

展覧会図録

完売