トルコ共和国文化省

現代絵画展 工芸とイズニックタイル展

―伝統を今に引きつぐ魅力にせまる幻のイズニック―

2003年9月23日(火)~2003年10月5日(日)

「2003日本におけるトルコ年」のこの年、区内に大使館を置くトルコ共和国と渋谷区の友好を記念して、当館では3つのトルコ関連企画を実施した。本展はその最後の企画である。トルコ共和国文化省(同年9月に文化観光省)の協力を得て、現代絵画からイズニック・タイルや伝統手工芸品にいたる多彩な内容で、色濃く伝統を残す現在のトルコの魅力を紹介する機会となった。
会場は絵画と工芸の二部で構成された。絵画はトルコ近現代絵画史を俯瞰した「トルコ中央銀行コレクション展」(3月開催)に続いて、今回は現代作家を中心に、その後の絵画史の流れを補完する内容となった。全国で数多く展開されたトルコ年展のなかで唯一といってもよい近現代絵画史に焦点を当てた画期的な内容であったといえるだろう。工芸は、イズニック・タイルと伝統手工芸品、トルコ近代化以前に主流であったカリグラフィーで構成。イズニック・タイル部門では、文化省を通してイズニック・タイル財団の全面協力を得て、24点を展観。代表的な古典作品の模造や文様の忠実な再現が試みられた作品が多くを占めた。オスマン・トルコの繁栄の象徴でもあったイズニック・タイルだが、15~6世紀の繁栄から一転して、後援者たるオスマン帝国の衰退や他窯の躍進などにより、その技術や文献までも17世紀には失われた。20世紀に入り、調査・復興への努力が結実して、イズニック・タイル財団が平成5(1993)年に設立。今日ようやく当時の高い技術的水準にたどり着いた。いま一度その魅力を世界へ向けて紹介することもその主眼に入れてきた財団にとって、本展は非常に小規模ながらその研究成果の結実を示す格好の展示となった。現代的な伝統の継承のあり方を示す視点で、有意義な内容であったと考える。
最後の伝統手工芸部門では、現在も愛用されている銀・銅製品、今も深く信仰されている邪視信仰のナザール・ボンジュウなどを紹介。同時にミニアチュール(細密画)やマーブリング、テズヒップ(装飾芸術)も展覧し、現代絵画と比較できる内容となった。会期中には、テズヒップやキリムの作家も来日し、実演も開催。会期後、世界的に有名なトルコの建築家・テュメルテキン氏設計、イズニックタイル財団製作の伝統的なチューリップ文様タイルを使ったモニュメントが渋谷区に寄贈された。

展覧会情報

会期 2003年9月23日(火)~2003年10月5日(日)
入館料無料
休館日主催 渋谷区立松濤美術館 駐日トルコ共和国大使館
展覧会図録

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完売