開館二十五周年記念特別展

骨董誕生

日本が愛した古器物の系譜

2006年5月30日(火)~2006年7月9日(日)

我々が日常生活で見かける美しい器物は、人の技術を尽くして完璧な形や色を追求したものと、完璧にこだわらずに自然の風合いを残した「味もの」の二種に、大別できるように思われる。完璧を誇るものの美しさは分かりやすいが、形の歪みや色ムラやシミといった「味(景色)」に情趣を感じるのは、文化が熟成してはじめて現れる美意識であろうし、恵まれた周辺に在った日本において、ようやく生み出し得た美学だったのではないか。骨董は古物一般について使われる言葉であろうが、この展覧会では、そのような味ものに限って「骨董」と呼ぶことを提案し、その特殊な美学が生まれた過程を検証しようと試みた。
我が国における器物鑑賞は、完璧なものを敬遠し、味ものを愛でるわびの美学を中心に据えてきた歴史がある。それは室町時代のわび茶に発し、明治時代までは主として茶道具の鑑賞に受け継がれたが、その後欧米から器物をアートとして鑑賞する流儀を学び、用のために生まれた雑器の美しさに気付いた柳宗悦によって新たな方向性を与えられて、味ものを愛でる美学は新たな段階を迎えた。古器物の持つ「味」を選び抜いて、その蒐集に自己を表現する「骨董」が確立したのである。大成者は希代の陶磁器鑑賞家として知られる青山二郎(明治34(1901)年-昭和54(1979)年)。昭和10年代のことであった。
この展覧会では、青山や小林秀雄らによって確立し、戦後白洲正子や安東次男らに受け継がれた「骨董」の歴史を、ゆかりの品によってたどるとともに、現代の数寄者のコレクションもまじえて、「骨董」の神髄を探ろうとした。幸い多くの来館者に恵まれ、古器物鑑賞の世界に、一石を投じる事ができたものと考える。

展覧会情報

会期 2006年5月30日(火)~2006年7月9日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障害者の方は無料
※毎週土曜日は小中学生無料
休館日毎週月曜日
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売