迷宮+美術館

コレクター砂盃富男が見た20世紀美術

2006年10月31日(火)~2006年12月10日(日)

本展覧会は、群馬県前橋市で個人美術館を運営していたコレクターで、平成13(2001)年に他界した砂盃富男氏のコレクションを紹介したものである。昭和5(1930)年に前橋に生まれた砂盃氏は、50年に日本銀行前橋支店に入行した。その後、銀行勤務の傍らに美術活動を行い、昭和37(1962)年、昭和38(1963)年に読売アンデパンダン展に出品し、昭和38(1963)年には「群馬NOMOグループ」を結成するなど、群馬の前衛美術活動を推進する作家として活動した。作家活動とともに蒐集を始めた作品は、作家としての視点や、各地に転勤した先々で知り合った画廊や作家との交流のなかで数や範囲を広げて蓄積され、最終的には400点を越える版画を中心としたコレクションに成長する。平成3(1991)年の退職後には自宅を改装し個人美術館「イサハイ・ベル・イマージュ美術館」を開設、独自の切り口による企画展も開催した。
本展は砂盃氏が特に注目した作家を中心に、約130点の国内外の20世紀の美術作品を展示した。また、絵画の制作や、詩の創作など文筆活動もおこなっていた砂盃氏の作品や資料も併せて展示することにより、その多彩な活動の一端も紹介した。戦後版画の個人コレクションとしては国内有数の規模と質を誇るこの作品群を一堂に公開できたことは、一般に、蒐集家の人物像や個人コレクションの全貌がわかりにくいことをふまえれば貴重な展観であったと思われる。展示作品中、海外の作家はシュルレアリズムの作家が多く貴重な蒐集であることに興味をもった観客が多かったことと同時に、現役の日本作家も少なくなくいまなお戦後の活動にコミットしている同時代性も感じられた。近年は個人コレクションの紹介展がしばしば開催され、各地のコレクターの公開と位置付けが試みられるが、本展もそうした流れのなかにあって、特に小コレクターあるいはサラリーマンコレクターの存在の重要性に焦点を当てることができた。なお、郷里の群馬県立近代美術館および高崎市美術館との共同で調査研究の成果を披露し、巡回で開催した。

展覧会情報

会期 2006年10月31日(火)~2006年12月10日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障害者の方は無料
※毎週土曜日は小中学生無料
休館日11月6日(月)・13日(月)・20日(月)・24日(金)・27日(月)・12月4日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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価格:1,700円

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