清原啓一

遊鶏の賦

2007年4月5日(木)~2007年5月20日(日)

清原啓一氏は、渋谷区に50年以上住まわれたゆかりの作家である。松濤美術館公募展の審査委員長や渋谷区美術振興財団理事などを務められ当館の運営にもご尽力いただいたが、残念ながら展覧会後の平成20(2008)年10月に逝去された。画業60年の集大成ということで新作も出品されるなど熱意を込めて準備されたが、東京では最後の個展となった。その後、富山、尾道などでも開催された一連の回顧展は、同時に出版された『清原啓一画集』とともに、80歳を機に開かれた氏の画業を振り返る格好の展覧会であった。氏の当館での展覧会は、平成4(1992)年の小企画以来のもので、全館を使っての本格的な回顧展としては初めてであった。本展は代表作となった鶏のシリーズを中心に山岳シリーズや花の作品など、初期の作品から最新作まで52点の代表作で構成した。
清原氏は昭和2(1927)年、富山・砺波市に生まれ、富山師範学校、明治大学を卒業されたのち、光風会や日展をおもな発表場所として創作活動をつづけた。数々の受賞を重ね、日本芸術院会員、日展常務理事、光風会常務理事を務められるなど、今日の洋画壇の重鎮として活躍された。
昭和29(1954)年の日展にはじめて鶏を描いた作品を出品したのち、昭和39(1964)年には同展で《群鶏》が特選になるなど今日まで一貫して鶏を題材に描き続け、鶏の画家として評価と名声を得ている。その作風は、横溢する鮮やかな季節感がながれるなか、激しく闘う鶏や長閑に遊ぶ鶏のすがたが象徴性をもって情感豊かに表現された独創的なものである。重厚なマチエールや艶やかな色彩によって装飾性も際立っており、油彩画ながら花鳥画的な画趣があり、まことに希有なものと言える。近年は、故郷富山の剣岳や信州浅間山などの山岳シリーズにも力を入れていた。

展覧会情報

会期 2007年4月5日(木)~2007年5月20日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障害者の方は無料
※毎週土曜日は小中学生無料
休館日4月9日(月)・16日(月)・23日(月)・5月1日(火)・7日(月)・14日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

展覧会図録

価格:1,100円

購入する