没後90年 ガランスの悦楽

村山槐多

2009年12月1日(火)~2010年1月24日(日)

22歳5ヶ月で逝った夭折の画家、村山槐多(明治29(1896)年-大正8(1919)年)の回顧展である。
早熟で多感な青年であった槐多は、絵画と文芸に独特の感性を発揮した、大正が生んだ異色の才能だった。
浪漫性をたたえた表現、比類ない対象把握の凄みは、ほかの何ものでもない槐多の絵としか言いようがない。高村光太郎に「火だるま槐多」と呼ばれ、みなぎる生命力をたたえながらも死に向かうデカダンスをまとった槐多は、貧困と宿痾のうちに烈しく短い生涯を駆け抜けた。彼の生き方は、近代が生み出した「夭折」という魅力的な姿を遺した。美を具現化する方法として、槐多は個人感情の発露と表現とを融合して、あらたな絵画のかたちと画家の姿を私たちに見せてくれた。日本近代美術の青春期とも言えるこの時期、その存在は象徴的でさえある。
今年は槐多が代々木の〈鐘下山房〉で没してから90年にあたる。特に関根正二とともに槐多は、夭折画家として人気があり、あらゆる世代の来館者がみえた。前回の回顧展から10年経て、村山槐多の回顧展を期待していた人々の思いが感じられた。とくに本展は、副題にある「ガランス」のイメージを強調し、タイトルロゴはもちろん、すべてのデザインを統一し、その一環として展示構成にも工夫を凝らした。渋谷駅周辺にある街角ヴィジョンにも、独自の画像を流し宣伝効果を高めた。

展覧会情報

会期 2009年12月1日(火)~2010年1月24日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障害者の方は無料
※毎週土曜日は小中学生無料
休館日12月7日(月)・14日(月)・21日(月)・24日(木)・28日(月)~1月4日(月)・12日(火)・18日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売