型絵染の重要無形文化財保持者、芹沢銈介(明治28(1895)年-昭和59(1984)年)は、30代前半に民芸運動の創始者で、生涯の師となった柳宗悦と出会い、そして沖縄の伝統的な染色である紅型に衝撃を受けたことを契機に、本格的に染色の道へ入る。河井寛次郎、浜田庄司らとともに民芸運動に参加し、紅型を精神的な支柱にすえつつ、極めて独創的な型絵染を考案。曇りのない明るさと静けさに満ちた芹沢の作品は、国内外で個展が開催されるなど、国際的にも高い評価を得ている。
所蔵者・宗廣陽助氏は、郡上紬の重要無形文化財保持者であった宗廣力三の長男として、岐阜県郡上市に生まれ、芹沢の生涯の師であった民芸運動の創始者・柳宗悦の甥の染織家・柳悦孝に師事、芹沢銈介と出会い、傾倒するようになる。紬織り制作者として、伝統を担っている氏のコレクションは、代表的な型絵染による屏風、暖簾、着物のほか、氏が心から師と慕う芹沢の「手」が強く残る硝子絵や板絵、スケッチ帳などの肉筆作品が充実している。芹沢作品のなかでも、芹沢が直に手掛けたもの、作品の仕上がりまで芹沢銈介が手を触れているものだけに関心がおかれ収集された類まれなコレクションなのである。また宗廣氏は、生涯に5000もの民芸品を蒐集していたといわれている芹沢の影響を受け、独自の観点により国内外の民芸品も多く蒐集している。わずかであったが、芹沢作品とともに陳列できたことも本展の魅力の一つとなった。一人の染織家が自身の研究と芹沢への想いから強い情熱をもって蒐集してきた作品群は、芹沢作品の本質を際立たせ、硝子絵など肉筆画を初めて目にする鑑賞者も少なくなく、再来館がとても多かったことも今回の展示への関心の高さがうかがえる。宗廣氏による記念ギャラリートークも、大変に盛況であった。
展覧会情報
会期 | 2011年10月4日(火)~2011年11月20日(日) |
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入館料 | 一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障害者の方は無料 ※毎週土曜日は小中学生無料 |
休館日 | 10月11日(火)・17日(月)・24日(月)・31日(月) 11月4日(金)・7日(月)・14日(月) |
主催 渋谷区立松濤美術館 東京新聞
協力 岐阜県美術館 |
展覧会図録
完売