近代工芸の先駆者である藤井達吉(1881~1964)の全貌展です。
藤井達吉は「工芸家が同時にそれ自身画家でもあり、建築家、彫刻家でもある」ことが理想だと言っています。単なる技術集団としての工芸家ではなく、工芸は生活のなかの存在であることをめざしました。けっして高踏的な臭みもなく、大衆へ向けた眼差しを持ちつづけた由縁でもあります。だからこそ時を越えていま、見えなかったものが私たちに語りかけてくるのでしょう。
その脳裏にあったのは、明治期の輸出を目的とした殖産興業的な工芸からの脱却でした。同時代の工芸家である富本憲吉、津田青楓、バーナード・リーチ、高村豊周らとともに、いわば過去の何ものにもとらわれない新思潮の芸術意識をもった「自由な工芸」を創造しました。藤井はあらゆる技術と材料を猟蒐しタブーを侵して混交し、そのための発想と制作は一人の工芸家の手に統合されなければならないと考えました。その活動は驚くほど広範囲で、七宝、刺繍、染色、金工、木工、陶芸、手漉き和紙など工芸全般にわたり、さらには、日本画、墨画、油彩画、木版画、装丁などの制作も多彩です。
しばしば、奇想とも思える作品が生まれますが、彼の発想の奥底に秘められた自然観はユニークなものでした。アール・ヌーヴォー的なものあるいは琳派風から出発しますが、自然を観る目に支えられたデザインは、大正昭和の美意識を背景とした魅力あるものです。じつに素朴に、じつに愚直に工芸と絵画とを融合することで実現しようとしました。
本展では最近になって次々と知られるようになった全盛期の作品を紹介することが可能になりました。藤井の全貌を展観する規模で構成し、その芸術の魅力と特異性を紹介しようとするものです。
展覧会情報
会期 | 2014年6月10日(火)~2014年7月27日(日) |
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入館料 | 一般500円、大学生400円、高校生・60歳以上250円・小中学生100円
※団体(10名以上)のお客さまが同時に入館される場合、2割引となります。 ※障がい者とその付添の方各1名は無料です。入館の際に障がい者手帳等をご提示ください。 ※金曜日に入館される渋谷区民の方は無料です。入館の際に住所のわかるものをご提示ください。 ※土・日曜日、休日、小中学生は無料です。 |
休館日 | 6月16日(月)、23日(月)、30日(月)、7月7日(月)、14日(月)、22日(火) |
主催 渋谷区立松濤美術館
特別協力 碧南市藤井達吉現代美術館 企画・運営協力 株式会社キュレイターズ |
展覧会図録
完売