戸栗コレクション

有田の染付と色絵

―伊万里・柿右衛門・鍋島―

1984年11月13日(火)~1984年1月20日(日)

17世紀初頭の肥前有田郷において、磁器の焼造が始められたことは、日本陶磁史上の画期的な事件だった。
そして、中国に生まれた染付・色絵の技法が、この地で独自の展開をとげ、伊万里・柿右衛門・鍋島という様式を生み出し、さらには、17世紀後半、オランダ東印度会社の手により、中国磁器に代るものとして、ヨーロッパ各地に輸出され、彼の地の王侯貴族を中心に愛好され、ついには、ヨーロッパ各地の窯業の発達にも大きな影響を与えたのである。
本展では、渋谷区在住の戸栗亨氏が多年にわたり蒐集された陶磁器の中から、初期伊万里・古伊万里・柿右衛門・鍋島という有田で焼造された各様式の磁器108点を陳列した。
出品作の中には、李朝染付と酷似する「染付面取徳利」の如く、有田磁器の創造に力あった李朝陶工の望郷の思いをうかがわせる初期伊万里の作、或いは、宣徳青花に類似する「染付唐花文扁壺」、そしてオランダ東印度会社の略号V.O.C.を染付で描いた「染付二果文皿」など、鎖国時代にもかかわらず、朝鮮・中国・日本・オランダという広範囲にわたる文化交流を如実にうかがわせる各種の染付の名品があり、また、元禄時代の華やかな商人文化の一端をうかがわせる、「色絵寿字宝尽文鉢」「色絵荒磯文鉢」などの型物伊万里の代表作がある。
一方、鍋島藩の御用窯で作られた鍋島焼は、藩主の御用・将軍家や諸大名への献上品として作られたために染付・色絵の技法を駆使し、高い気品、今日に通用するすぐれたデザインを有し、中国の官窯とは一味違った完成度を示している。
また、出品作の中には、嘗ては古九谷とされていた「色絵牡丹文瓶」や銹地の皿など、伊万里と九谷の関係を考える点でも、興味深いものになったと考える。
本展を通して、有田磁器の系譜が一応概観しえた点、個人コレクションという制約がありながらもそれが可能であったことは、戸栗コレクションの一つの特長として評価しえるものと考えられる。

展覧会情報

会期 1984年11月13日(火)~1984年1月20日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日第2日曜日及び他の週の月曜日・祝日の翌日(11月24日は27日に振替)。年末年始
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 特別陳列 渋谷区在住作家の作品
展覧会図録

展覧会図録

価格:1,500円

購入する