特別陳列

久我修・勝野正則

1989年3月7日(火)~1989年3月21日(火)

松濤美術館は、毎年、渋谷区在住、在勤者による公募展を開催している。今回、サロンミューゼにおいて、公募展受賞以後の活躍が特にめざましい若い作家を選び、その作品を陳列した。
久我修は第2回松濤美術館賞を受賞した作家である。独立美術展を中心に作品を発表し続け、昭和63(1988)年には安井賞展にも出品している。彼は自己の世界観と内面を子供の群れ遊ぶ情景に託して表現している特異な作家である。動きを強調したダイナミックな具象絵画である。久我は初期には、鮮やかな色彩のシュールレアリズム的題材を手がけていたが現在は、子供の情景をテーマに、色彩を抑制した動きを伴った遊びが創り出す空間のダイナミズムを表現している。広場で遊ぶ歪んだ顔の子供達は目だけを残して空間に溶け込み、空間の振動と時間の経過を暗示させる異次元世界を示している。日常目にする何の変哲もない風景が、異星人の子供が繰り広げる風景や地球破壊後の風景であるかのように迫ってくる。久我の閉ざされた内的風景であろうか。無邪気で不気味な矛盾した人間性を久我は子供の姿形を借りて透視しているように思える。
勝野正則は第3回公募展優秀賞を受賞している。彼は自由美術や個展を中心に発表を続けてきた。20代の頃は線を主体とした彫刻を制作していたが、現在はハードボードを素材としたレリーフ的平面作品を制作している。「奥行きのある窓」シリーズに代表されるような黒を基調とした近年の作品は、ゆるやかな曲線によって区切られた不整形なボードを微妙に高低差をつけて組み合わせ、境界面に落差と凹みと陰影を生じさせることによって、奥行きと多層空間を生み出している。ハードボードを松煙で着色し、暖みのある画肌を感じさせるが、境界線にハンダ技法の金属埋め込み作業を施して、研ぎすまされた硬質感をも加味している。

展覧会情報

会期 1989年3月7日(火)~1989年3月21日(火)
入館料無料
休館日3月12日(日)、20日(月)
併催 第7回渋谷区小中学生絵画展
展覧会図録

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価格:300円

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