特別陳列

磯村敏之

1990年2月18日(日)~1990年3月4日(日)

磯村敏之は、昭和2(1927)年6月、愛知県刈谷市に生まれた。
昭和23(1948)年、東京高等師範学校芸能科油絵に入学。画家としての道はここから始まる。その意味で、戦後絵画の潮流の中で活動してきたわけである。1960年代の主体美術創設に参加する前の一時期、抽象表現主義的な作品を残していることは、時代の流れに反応した証といって良いであろう。その後、他の多くの画家と同様に社会的現実への関心から、ベトナム戦争をテーマにした一連の作品、或いは高度成長経済の中で破壊されてゆく自然などをテーマとした埋立地や工場を画いた作品を残し、安井賞への出品を重ねてもいる。このように、作品の中に社会的現実を写し出していくことは、戦後民主主義の潮流の中で生きて、また直接にかかわってきた証でもあった。高度成長も終わった1980年代に入ると、磯村の画くモチーフは武甲山などの山、伊豆や佐渡などの海、そして、近年は中国西域、欧州あるいはエジプトなどへの活発な取材に基づく風景、人物に変わっていく。武甲山のシリーズなどには破壊された自然というテーマが生きてはいるものの、より造形的なものの追求という姿勢が顕著になっているように思われる。それは磯村が以前に画いた工場やガスタンクにすでにみられる姿勢でもある。磯村の中で、一つの戦後が終わりを告げ、新たな展開をなしつつあると言えるのではあるまいか。
本展では昭和44(1969)年の「埋立地にて」から、近作の「アンダルシアの白い町」までの11点の油彩と4点の素描を陳列し、磯村の画業を顧みた。

展覧会情報

会期 1990年2月18日(日)~1990年3月4日(日)
入館料無料
休館日2月19日(月)、26日(月)
併催 1990松濤美術館公募展
併催 特別陳列 橋本コレクション 中国の墨梅画
展覧会図録

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価格:500円

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