中近東遊牧民の染織

―松島コレクション―

1985年6月11日(火)~1985年7月28日(日)

西はトルコから東はアフガニスタン、パキスタンに至る中近東の国々は、古くから家畜を飼育し、牧草を求めて移動する遊牧民の活躍した舞台であった。近年、遊牧民の生活形態は消えつつあるが、今もなお、その一部は苛酷な風土の中で生き続けている。移動と自給自足の生活を基本とする遊牧民は、自ら飼育する家畜の毛を利用して生活用品の大部分を織物で作ったといっても過言ではない。動く家屋としてのテントから、カーペット、衣類、袋物など生活のあらゆる細部にまで部族独自の文様で織られた織物が使用された。このように遊牧民の染織品は、彼らの生活形態、文化、美意識の集約されたものといえる。
本展のコレクションは、医師である夫とともに、北インド、イラク、ナイジェリアなどで長年生活された松島きよえ氏が、現地の遊牧民を積極的に尋ね歩き、直接収集された貴重な染織品の中から選び構成したものである。10ケ国、13部族の敷物を中心にテント用具、袋類、帯、装飾品など100点余りを陳列し、実際の暮らしの中での使われ方を理解できるように、パキスタンのブロイ族のテントを基本に構成してテント内部の様子が分るようにした。
本展の見どころの一つは、商業用の華やかなパイル織カーペットではなく、遊牧民が本来生活に使用していたフラット・ウィーグ技法の敷物の優品ならびにハザラ族のフェルトなど日本ではほとんど紹介されたことのない作品を数多く展示した点にあり、日本での初めての本格的な展示となった。染織品に対する知識と関心が深まりつつある日本において、長い歴史を持つ中近東遊牧民の染織品の本格的な展示は、大きな反響を呼び多数の来館者を記録した。

展覧会情報

会期 1985年6月11日(火)~1985年7月28日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日6月17日(月)・6月24日(月) 7月1日(月)・7月8日(月)・7月14日(日)・7月22日
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売