メトロポリタン美術館所蔵

ジャクソン・ポロックの素描

1985年8月20日(火)~1985年9月29日(日)

ポロックはアメリカ現代美術を代表する画家で、抽象表現主義の代表的存在として活躍した。
1912年ワイオミング州コディに生まれ、1930年よりニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグに学んだ。そこでは“地方主義”の写実画家トーマス・ベントンに師事する。この頃のニューヨークではピカソを始めミロ、カンディンスキーらのヨーロッパの前衛芸術が盛んに流入しており、一方、“地方主義(レジョナリズム)”などのいわゆる“アメリカン・シーン”の作家群がおり、一種混沌とした状況であった。1938年からニューディール政策の一環としての連邦美術計画に雇われ、シケイロスの「実験工房」に参加した。ここでの壁画制作はポロックに大画面での制作を示唆するとともに、新技法に接する機会でもあった。1943年「今世紀の美術」画廊で最初の個展を開催する。40年代には少年時代を過した西部の記憶‒インディアンの砂絵や、神話からのヒントを得た作品を描いた。
1947年ポロックは初めてのドロッピングの技法による作品を描く。床に敷いた巨大なキャンバスに流動的な絵具でドロッピングし、文字どおり“絵の中に入って”制作する状態であった。評論家ハロルド・ローゼンバーグはこれを「アクション・ペインティング」と命名し絶賛した。ポロックのこうした芸術の誕生に大きな影響を与えたのは、40年代に大戦を逃れてアメリカに亡命してきた、アンドレ・ブルトン、エルンスト、ダリ、マッソンらのシュールレアリストたちであり、無意識世界の探究から主題を引きだそうとするシュールレアリスムの理論であった。壮大な宇宙空間ともいえるポロックの絵画は、一面、精神内奥にあるカオスの表現でもあった。
1956年、イースト・ハンプトンで自動車事故のため死去。激烈な生涯を閉じた。ポロックはその短い生涯にもかかわらず、抽象表現主義の中心的作家としての役割を果たし、アメリカ絵画の地位を国際的なものまで押し上げ、以後のいわゆる“アメリカ型絵画”を決定した。
本展はポロック夫人であるリー・クラズナーが1982年にニューヨーク・メトロポリタン美術館に寄贈した貴重な素描の中から34点を選び初公開陳列したものである。なお、参考出品として日本国内に所蔵してあるタブロー作品3点を陳列した。

展覧会情報

会期 1985年8月20日(火)~1985年9月29日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日8月26日(月) 9月2日(月)・8日(日)・16日(月)・17日(火)・23日(月)・24日(火)
主催 渋谷区立松濤美術館
共催 東京新聞
併催 特別陳列 伊藤隆康
展覧会図録

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完売