特別陳列

遠藤享・森本潤一

1991年2月10日(日)~1991年2月24日(日)

この展覧会はグラフィックデザイナーとして活躍し、同時に版画作家でもある遠藤享と森本潤一のオフセットによる版画作品を陳列した。遠藤享15点、森本潤一12点の合計27点である。
遠藤享は一貫して〈SPACE&SPACE〉と名付けられたシリーズを制作している。その作品は、空間をダブらせることにより異空間を現出させるものである。物体の重なり、画像のズレ、エッシャー的な空間感などを駆使した虚の世界である。実際には、一旦撮影した壜、卵、果実、電球などの写真を、ポジ/ネガの交互に変換された映像として形のはめ込みによる画像操作で作品に仕上げてゆく。写真となった現実は情報の集積として生成され、完成への過程で物体は非物質な存在へと変容している。
一方、森本潤一は同様に写真を使用しているが、一切映像に手を加えていない。木片を折る、裂く、あるいは塗る、燃やすという行為の後、その木片の集積を再構成する。しかし、その手ざわりや質感を忠実に再現しながらも、物質の実体は消え去りモノクロームに浮遊する形態の集積に変貌する。木片は本来の意味を剥奪され、いわばその脱け殻だけが意味をもち、抽象性のための抽象を演じている。物質に対する行為がこの作品を支えているのである。
あえて、この二人の作家を組み合わせたのはグラフィック・デザイナーである彼らの感性に共通点がおおく見られるためである。両者共に自ら撮影した写真をもとに構成したオフセットによる作品である。そしてなにより、彼らの事物に対する突き放した目差しには、実在の世界をそれにオーバーラップする異次元に移行させる方法論をはらんでいる。

展覧会情報

会期 1991年2月10日(日)~1991年2月24日(日)
入館料無料
休館日2月12日(火)、13日(水)、18日(月)
併催 1991松濤美術館公募展
展覧会図録

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価格:400円

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