美とわざとのハーモニー

19世紀末ヨーロッパの捺染布

亀井茲明コレクション

1985年12月24日(火)~1986年2月2日(日)

亀井コレクションは、明治中期、当時海外留学生としてドイツに赴いた旧津和野藩主亀井家第13代亀井茲明伯爵が、現地で美学美術研究の一環として蒐集した染織を中心とする図案資料の集大成である。昭和57(1982)年当館で初公開したのに続き、今回の展観では捺染布(プリント布)に限定し、約180点で構成した。
19世紀、産業革命と市民革命に象徴されるように、染織産業にとっても大きな変革がもたらされた。織物や捺染技術の発展、合成染料の出現を背景に、捺染布は廉価に供給されるようになり、大量消費時代をむかえた。産業技術の革新によって、次第に染めの制約から解き放たれ、より自由なデザインの創作が可能になったが、それは同時にコストの低い、仕上げのしやすい、しかも「流行」にあった模様でなければならなかった。
会場では、コレクションの中から織物風模様・単彩調・多彩調・濃い地色の模様・点描手法・虹色のぼかし模様・バラのモチーフ・ペイズリー模様のバリエーション・小花模様・アールヌーボー調の模様を選び、額装にして陳列した。これらの模様からも、オリエントや東南アジアの模様やヨーロッパの伝統・様式を混合した、時代の特徴を示す、創意と工夫が窺える。
また、文化学園服飾博物館の協力を得て、当時の染織・デザインによる服飾5点を参考出品することにより、具体的に捺染布が使用された例、あわせてクリノリーヌ・トゥールニュール・S字形シルエットといった服飾デザインの変遷も概観出来るよう配慮した。
染織研究科はもとより、デザイナー・染織工芸家等各方面で、織り・染め・模様・流通をはじめとして多くの点で今日の工業プリントデザインの基礎となった19世紀末捺染布を再認識する貴重な資料になったと思われる。

展覧会情報

会期 1985年12月24日(火)~1986年2月2日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日12月29日(日)~1月3日(金) 1月6日(月)・12日(日)・16日(木)・20日(月)・27日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
共催 社団法人霞会館
併催 受贈記念特別陳列 村田勝四郎の彫刻
展覧会図録

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完売