特別陳列

山口薫

1991年3月5日(火)~1991年3月21日(木)

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本展は当館寄託品の中から、山口薫の初期から晩年までの油彩画20点とデッサン10点、リトグラフ4点、合計34点を陳列した。
山口薫は初期の作風である形態の単純化による緊密な画面から、次第にそれぞれの造形要素、直線、曲線、そして色面を抽出する方法に向かう。モティーフは山野風景や鳥、牛などの動物、あるいは身近な事物であるが、抽象でもって画面を構築するようになる。菱形、円形は彼のそうした形象を代表するものである。一種のパズル化された色面は尚且つ具体的に事物と密接な関連を保ちながら生成する。晩年近くになり彼の作風はそれまでの形態のもつ力が弱まり朦朧とした空間が生まれるが、そうしたなかでも彼の造形姿勢は貫かれているといえる。
山口薫は生涯にわたり具象絵画を描き続けたにもかかわらず、根底には造形的な要素による抽象性の追求が見られる。その具象と抽象の間のなかで彼は近代の多くの画家が求めたモダニズムを具現している。そして、“近代化の中に素朴を”という彼の姿勢が、冷たい抽象ではなく豊かな内面世界の表出に向かわせた要因であろう。彼が追求した造形性は、同時代の画家として具象作品の一典型を与えた功績はおおきい。

展覧会情報

会期 1991年3月5日(火)~1991年3月21日(木)
入館料無料
休館日3月10日(日)、11日(月)、18日(月)
併催 第9回渋谷区小中学生絵画展