橋本コレクション

中国の絵画 ―来舶画人―

1986年4月15日(火)~1986年5月25日(日)

本展は、橋本コレクションの中国絵画の2回目の展観となった。本展では、17世紀から19世紀、つまり、明末から清朝一代にかけての中国から、江戸時代、明治初期の日本を訪れた中国人画家、いわゆる来舶画人44作家86点の作品と12点の書跡などを陳列した。
いうまでもないことながら、日本と中国との間には長い交流の歴史があり、日本文化の相当の部分が中国の影響をうけて成立している。江戸時代は、その大部分が鎖国体制にあったわけであるが、唯一の開港場長崎を窓口に中国文化の受容は続けられ、文物・書籍などが輸入され、儒者、僧侶、医師、そして画家などが往来し、日本人と接触し文化を伝えたのである。
絵画に関していえば、明末清初に来日した黄檗僧と随伴してきた画人達が北宗系の画技を伝え長崎漢画の基を築いたのにつづいて、沈南蘋一派が来日し、長崎派花鳥画の形成に力があり、広い範囲にわたり影響を与えたことは周知の如くである。彼らは、中国商船に乗ってきたわけであるが、その中国商船の船主の中に、伊孚九・江大来などの画技を善くする者がいて、長崎を訪れた日本の文人たちに画法を伝授し、それが日本南画の展開に多大な貢献をしたのである。こうした意味で、近世日本絵画の展開における来舶画人の果たした役割は極めて大きいと言わねばなるまい。
また、注目すべきは、来舶画人の名は、中国の画史には残らず、日本にのみ作品が残り名が伝えられているという点である。その意味では、中国絵画史の埋もれた一断面、中国の地方(浙江・福建など)文化を知るという事で貴重であり、中国文化の底の深さを知る意味でも意義があった。そして、このことは、賞鑑家・研究者としての橋本末吉氏の卓越した識見・研究者としての姿勢を示すものともいえるであろう。

展覧会情報

会期 1986年4月15日(火)~1986年5月25日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日4月21日(月)・28日(月)・30日(水) 5月6日(火)・7日(水)・8日(木)・11日(日)・19日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 特別陳列 大久保泰
展覧会図録

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完売