Lufthansaコレクション

現代ドイツの素描

1986年6月10日(火)~1986年7月20日(日)

本展はケルンのルートヴィヒ美術館で最初に公開されて以来、各国を巡回している素描コレクションの日本での展覧会である。このコレクションは、ルフトハンザドイツ航空がルートヴィヒ美術館の協力のもとに収集したもので、現在、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)で活躍している43名の作家による123点の素描作品で構成されている。作家・作品の選定にあたっては1970年代から1980年代初頭におけるドイツの美術状況を現わし、現代に通用する生々しいテーマを持つということが考慮されている。特徴的なことに、選ばれた作家は現在西ドイツで活躍しているものの東ドイツ、あるいはチェコスロバキアなどの東欧出身の作家が相当数含まれており、国境を越えた美術の関わりが如実に現われている。また、その中には版画、タブローを主にした作家から立体作品、スペース・アート、ビデオ・アートと呼ぶべき作品を手掛ける作家まで含まれるなど多種多様な人選が見られ、彼らが制作した素描もまた現代ドイツの美術を総括すべく様々である。
展覧会の構成は8部から成っている。ベルナルト・ツュルツェなどの“アンフォルメル”やハインツ・マックの“ゼロ・グループ”の第2次大戦後の前衛芸術隆盛期から始まり、パレルモ、ヨゼフ・ボイスを経て、A.R.ペンク、ゲオルグ・バゼリッツなどの近年注目されている新表現主義まで、戦後美術史を踏まえつつ表現内容やテーマによって分類している。
 今日の素描は決して従来の枠で捉えられるものではなく、多彩な表現手段と意味をもっている。今回陳列した作品も技法の点からみれば、鉛筆、インク、チョークといった伝統的画材ばかりでなく、ラッカーや油性木炭を用いたり、コラージュの手法や表面の引っ搔きなど新しいテクニックを使っている。また、その意味するところは、タブローや立体作品の下絵的な素描ばかりでなく、作品の技術的なプログラム、プロジェクトの行動計画・記録・ビデオ作品の概念説明といったものがみられる。このように、多くの作家は素描の意味を全く新たな観点から独立した表現形態として捉えている。その一つの特色として、
画面が大きくなりタブロー絵画のような感覚でそれ自体で完結した作品として取り込む姿勢がみられる。
こうした現代の美術状況を反映した本展の作品ではあるが、その中には実直、厳格な国民性が随所にみられるのも事実である。

展覧会情報

会期 1986年6月10日(火)~1986年7月20日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日第2日曜日及び他の週の月曜日、祝日の翌日
主催 渋谷区立松濤美術館 東京新聞
後援 ドイツ連邦共和国大使館
協力 ルフトハンザドイツ航空会社
展覧会図録

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完売