伊東コレクション

古玩の世界

1986年12月9日(火)~1987年1月25日(日)

古玩とは、いとおしみ、愛でてやりたくなるような魅力的な、趣のある古器のことをいう。
これらは、単なる美術品ではなく、かといって純然たる鑑賞の芸術ではなく、鑑賞家の身近な“かたらいの相手”である。そして、探し求めて得られたものには、自然と情熱が湧き、接した時の直接的な感激を呼び覚すものである。
本展は、渋谷区在住で日本陶磁協会理事を務めておられる伊東祐淳氏が多年にわたり蒐集され、身近におかれている古玩を約120点陳列した。
伊東氏の古陶磁蒐集は、京都帝国大学在学中にはじまり、当初より名品主義的な態度にとらわれることなく、ことに江戸時代に興った地方の窯で焼かれた、愛好家の間で“国焼もの”と呼ばれる作品の蒐集・研究に力を注がれた。この国焼の蒐集としては、特にボストン美術館のモールス・コレクションが有名であるが、戦前は関西の山口吉郎兵衛氏、内貴清兵衛氏、東京の伊東祐淳氏、竹内金平氏の名前が知られていた。しかし、残念なことに四千点を数えたという伊東コレクションのほとんどは戦災で焼失した。
本展では、伊東氏の六十有余年の古美術遍歴によって培われた知識と、あくことのない探究心をもって見立てられた古玩から醸し出される独自の“あじわいの世界”を表現した。
主陳列室には、古信楽茶碗の代表作として知られる信楽茶碗 銘挽臼をはじめとする抹茶道具、懐石道具、香合、木米作・急須等の煎茶道具、文房具、特別陳列室には隅田川焼、相馬焼などの国焼を集め、文化・文政以降の地方窯の興隆の流れを概観出来るよう配慮した。
これらの古玩の世界を形成するそれぞれの作品の意匠にふれることにより、心を和ませ、感激を催す雅品に出会う楽しみを享受出来たのではなかろうか。

展覧会情報

会期 1986年12月9日(火)~1987年1月25日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日第2日曜日及び他の週の月曜日 祝日の翌日
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 特別陳列 渋谷区在住作家の作品
展覧会図録

展覧会図録

完売