特別陳列

傅抱石の絵画

―武蔵野美術大学美術資料図書館所蔵―

1995年3月7日(火)~1995年3月19日(日)

傅抱石は、江西省に生まれ、少年時代は陶磁器店で働きながら、独学により書画篆刻をおさめ、その後江西省第一師範学校を卒業、母校の教師を務めていたが、民國22年(1933年・昭和8年)、画家徐悲鴻の推挙を受けて日本に留学、創設間もない帝国美術学校(現・武蔵野美術大学)に入り、東洋美術史学者金原省吾のもとで美術史、美術理論を、また併せて山口蓬春、川崎小虎、小林巣居に日本画を、清水多嘉示に彫塑を学んだ。金原教授の残した日記には、緻密な指定関係が記されている。また、この留学中には、郭沫若とも親交を結んでいる。昭和9(1934)年に開かれた松阪屋での個展では、横山大観らの絶賛を受けた。民國24年(1935年・昭和10年)に帰国、その後、南京中央大学などの教授をつとめ、多くの著作を著すとともに、後進の指導にあたり、また、江蘇省國画院院長、中国美術協会副主席などの要職に任じられ、北の齊白石とともに「二石」と称された。その作品は、石涛や梅清の研究をもとに、抱石皺と称される独自の皺法を駆使した山水、特に雨景や瀑布を描くに優れ、また、楚辞や赤壁賦などの古典文学に題材をとった人物画は、独自の風格を持ち、中国現代画壇の傑出した存在といえる。
 前年に、武蔵野美術大学美術資料図書館で金原教授の御遺族の収蔵品や傅抱石の書簡、金原教授の日記等を併せて陳列され、また、秋には北京の中国美術館で生誕90年を記念しての大規模な回顧展が開催されている。本展では、武蔵野美術大学美術資料図書館に金原家より寄贈された傅抱石の留日中の絵画24点、書跡2点、印譜1点に当館寄託の橋本コレクションの中の帰国後に描かれた2点の傅抱石作品、及び金原教授が遺された日記、傅抱石の書簡などを併せ陳列し、画家、美術理論家として中国絵画史に偉大な足跡を残した傅抱石の早年の絵画学習の軌跡を探り、同時に金原教授と傅抱石との交情の一端をみた。中国国内での評価にくらべ、日本との関係が密接なのにもかかわらず、日本国内での知名度は高くないのは残念なことであり、今後、大規模な展覧会が開催されることを望んでやまない。

展覧会情報

会期 1995年3月7日(火)~1995年3月19日(日)
入館料無料
休館日3月12日(日)、13日(月)
併催 第13回渋谷区小中学生絵画展
展覧会図録

展覧会図録

完売