岡山市立オリエント美術館所蔵

オリエントのガラス

1987年8月11日(火)~1987年9月27日(日)

ガラスは、ガラス質の釉薬が陶器などの施釉製品から離れて、独自に形態を持ったもので、最古のガラス製品は紀元前三千年紀後半のメソポタミアの遺跡から出土している。ガラスによる容器の製作は、メソポタミアやエジプトで前16-15世紀頃から始まり、以後、前1千年紀後半までイラン・イラク、環地中海域でガラスの製造が盛んになった。この時代の製作方法は、コア・ガラスと呼ばれ、金属棒を芯にして中型を作り、周りに熔けた色ガラスを巻きつけて器体を作り、冷却して芯をとり出して仕上げる技法で、簡便だった為、盛行した。
前1世紀に、ローマ領シリアで、吹きガラスの技法が開発された。吹きガラスには、型吹きと宙吹きの2種類の製法がある。宙吹きガラス技法は、ガラスや鉄製のパイプの先に熔けたガラスをつけ、息を吹き込んで自由に成形し、ポンテを用いて切断し成形する方法で、この技法が確立されると、比較的大きなガラス容器の大量生産が可能となった。更に、ガラスの色も無色透明に近いものが生みだされるようになり、各種のガラス器が製作されるようになった。
地中海世界を中心とした吹きガラスの伝統は、周辺世界に広まり、ローマ帝国の広大な交易網にのって、ローマン・ガラス製品はヨーロッパ各地はもとよりインド、アフガニスタン、中国にまで伝播されることとなった。この傾向は、ローマン・ガラスの伝統を引きついだササン朝ペルシャやイスラム時代のガラスについても同様であった。
岡山市立オリエント美術館は、岡山学園理事長故安原真二郎氏が、情熱を傾けて蒐集されたオリエントの美術、考古遺品の岡山市に対する寄贈を契機に設立されたもので、現在、約3千点の作品を所蔵している。
本展は、岡山市立オリエント美術館の所蔵品のなかから、シリア、イランを中心としたオリエントのガラス容器、製品150余点を選び、陳列したものである。これらの中には、正倉院御物の切子瑠璃碗と同型体のイラン出土、円形切子装飾瑠璃碗などをはじめとするササンのカット・ガラスやシリア出土の類品の少ない把手付三連瓶などの貴重な作品も含まれている。すずやかで虹色に輝く古代ガラスの美は、夏期の入館者を魅了し、時宜を得た展覧となった。

展覧会情報

会期 1987年8月11日(火)~1987年9月27日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日第2日曜日及び他の週の月曜日 祝日の翌日
主催 渋谷区立松濤美術館
共催 岡山市立オリエント美術館
展覧会図録

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完売