タイ・ベトナムの古陶磁

1988年8月9日(火)~1988年9月25日(日)

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東洋陶磁といえば中国陶磁が歴史も古く技術的にも傑出したものであるが、朝鮮あるいは日本においても独自の価値をもつ陶磁の歴史があったことは周知のことである。インドシナ半島の古陶磁についても同様のことがいえよう。タイあるいはベトナムにおいても古くより陶磁器が焼かれ、それらは中国や朝鮮の陶磁とはまた違ったあじわいを持つものとして、古来日本でも一部の数寄者に「安南」あるいは「宋胡録」などの呼称をもって愛玩されてきた。本展は近年の東南アジア古陶磁への世界的な関心のたかまりをかんがみ、タイとベトナムの古陶磁の名品を陳列し、その歴史を概観しようとするものである。
タイの古陶は9世紀、カンボジアのクメール族によるクメール陶(ロッブリ陶)からはじまる。淡い黄色味をおびた灰釉陶のほか、11世紀には黒褐釉の美しい壺や瓶もつくられた。象や兎をかたどった愛らしい容器も焼かれている。タイ中部では13世紀にスコタイ王国、14世紀にはアユタヤ王国が成立し、タイ北部では13世紀にランナータイ王国が建設されるが、このころになるとタイの各地に窯が築かれ盛んに陶磁が制作された。とくに中部のシサッチャナライ、スコタイ、北部のカロン、サンカンペン、パーンなどは代表的な名窯である。中部で焼かれた鉄絵の文様をもつ青磁器は輸出用に量産もされ、日本でも「宋胡録」と呼んで珍重した。
 ベトナム陶磁の歴史は中国漢代にまでさかのぼるが、ベトナム独自の陶磁が焼かれはじめたのは11世紀に成立した李王朝以降である。12-14世紀には印花文様や刻文のある美しい青磁や白磁が生みだされている。「安南」として珍重された青花は14世紀にはじまり、15世紀には五彩(色絵)も製作されるようになってベトナム陶磁は最盛期をむかえた。これらの陶磁は海外にも輸出されたが、日本においても桃山時代から茶人などに好まれ、日本からの注文で作られたと思われるものもある。
 本展では、以上のようなタイ・ベトナムの陶磁を(1)ベトナム陶磁、(2)タイ陶磁を分けてそれぞれ概観し、さらに日本におけるその受容を(3)伝世品のコーナーで偲べるように3グループにわけて展観した。タイ・ベトナムの陶磁史を体系的に展望した企画として、専門家以外の人々にまで好評を得た。

展覧会情報

会期 1988年8月9日(火)~1988年9月25日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日第2日曜日及び他の週の月曜日 祝日の翌日
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売