アメリカの水彩画

―ホイッスラーからワイエスまで―

1988年10月18日(火)~1988年11月27日(日)

テキサス州ヒューストン所在の石油、天然ガス会社トランスコ・エナジー社は、質の高いアメリカ水彩画のコレクションを蔵していることで有名である。本展は同コレクションから、19世紀と20世紀のアメリカを代表する60作家66点による水彩画を選び陳列したものである。
アメリカ大陸での水彩画は16世紀から始まるほど古い歴史を有している。近年に於ける水彩画興隆の第一期は18世紀から19世紀前期のイギリスで興こった。その影響を受けて、合衆国では、19世紀と20世紀に水彩画が大変盛んになり、広く普及したのである。初期のアメリカ水彩画は、東部に植民した人々の間で、大自然を描いた人々や、国境の西方拡大につれて軍隊や調査隊に随行して、インディアンの風俗や中西部の大自然をスケッチして貴重な記録を残したいわゆる探険画家と呼ばれた人々によって数多く残されている。前者には、本展出品のW.G.ウォールやサミュエル・コルマンらがおり、後者はG.カトリン、トマス・モランなどが挙げられる。
アメリカでの水彩画普及に大きな貢献をしたアメリカ水彩画家協会に加わった画家の中で、J.C.サージェントとウィンスロー・ホーマーの二人は、アメリカ絵画史の中で高く評価されているばかりではなく、水彩画の名手として知られ、合衆国の水彩画の水準を一挙に高めた画家であった。19世紀から20世紀にかけて、多くの画家達がヨーロッパで学び、印象派や、立体派、野獣派などといった新しい様式、見方を学び伝え、合衆国の独自の画風、様式を作り上げていった。又、地方に根ざした芸術を標榜する「地方主義」や都市の貧民を描いた反アカデミズムの「ジ・エイト」などの画家達による運動も起こり、アメリカ近代絵画を豊かでダイナミックな内容にしていった。
本展には、ガイ・ウォールから、ホイッスラーを経て、マーク・トビー、アンドリュー・ワイエスに至るまで、アメリカ近代絵画の流れが水彩という形式を通して、わかりやすく概観できるように構成されている。これまで日本では、アメリカの美術がかなり紹介されてきているが、大半が20世紀以降の現代美術に焦点があてられてきた。本展は初期開拓時代の貴重な絵画も数点含まれており、加えて水彩画だけによるアメリカ美術の流れを網
羅した展覧は日本で初めてである。

展覧会情報

会期 1988年10月18日(火)~1988年11月27日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日第2日曜日及び他の週の月曜日 祝日の翌日
主催 渋谷区立松濤美術館 日本経済新聞社
併催 特別陳列 大正の詩人画家 富永太郎
展覧会図録

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価格:1,800円

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