特別陳列 2003日本におけるトルコ年

トルコ中央銀行コレクション展

2003年3月4日(火)~2003年3月16日(日)

「2003日本におけるトルコ年」を記念して、区内に大使館があるということもあり松濤美術館では、3つのトルコ展を行う。本展は、トルコ共和国中央銀行の協力を得て行う第二弾展である。日本の日本銀行にあたるトルコ共和国中央銀行の絵画コレクションは、トルコ政府関連施設のコレクションのなかでも、傑出した地位を占めている。収集された作品の多様性、質の高さ、そして現代性といった点から見て、美術館に勝るとも劣らないレベルの高いコレクションといえる。
1923年に建国されたトルコ共和国の共和主義的理想と、文化としての芸術に関わる方針に従って、芸術家を支援し、その創作活動を奨励することを目的に、収集が開始された。共和国が派遣した最初の留学生23人中、5人も画家が含まれていたことは、共和国が芸術面からの近代化を重要視していたことが窺いしれる。以後、コレクションは増えつづけ、今日のような多様性に富み、時代の最先端を取りこんだコレクションを形成するに至っている。
トルコ絵画は、伝統的な細密画(ミニアチュール)や、テズヒップ(コーランの一節を書いた文字の装飾絵画)やマーブリングといった絵画の伝統を持っているが、オスマン・トルコ帝国後期から西欧への関心が高まり、共和国の派遣留学生などによって、それまでの伝統を覆す、西欧絵画に追従した絵画が制作されるようになる。最初期には、アリ・サミ・バヤールら西欧へいち早く行く機会のあった軍人作家らが中心に活躍する。初めて迅速な筆法をトルコに持ち込んだイブラヒム・チャルらいわゆる第三世代の作家によって転換期を迎え、ようやくトルコの近代絵画が、西欧からの真似事から独自の発展を開始する真の意味での葛藤が始まる。本展は、中央銀行の芸術顧問であり、トルコで現在最も活躍する作家の一人であるハリル・アクデニズ博士の監修のもと、出品が実現した。33点という少ない点数ながらチャルまでの近代絵画の曙光に活躍した作家を丁寧に展観し、かつ現在にいたる代表的な作家の作品を網羅した展示となった。日本では展覧会はおろか、出版物においてもほとんど紹介されたことのないトルコの近代絵画の歴史を概観する貴重な機会となり、明治期から友好関係を続けるトルコの現在の芸術に対する関心を高める良い機会となったのではないかと思われる。
なお、本展は友好展により、入館無料であった。

展覧会情報

会期 2003年3月4日(火)~2003年3月16日(日)
入館料無料
休館日3月10日(月)
共催 駐日トルコ共和国大使館、トルコ共和国中央銀行
協力 (株)朝日アートコミュニケーション
併催 第21回渋谷区小中学生絵画展
展覧会図録

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価格:700円

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