渋谷区・パリ市六区文化交流特別展

19世紀ローマ賞絵画

パリ国立高等美術学校所蔵

1989年10月17日(火)~1989年12月3日(日)

本展は昭和60(1985)年に調印された渋谷区とパリ市六区の文化交流協定にもとづいて開催されたもので、昭和60(1985)年の秋に開催された「エベール・ドラクロワ・ザッキン」展に続く第2回目の展覧会である。陳列作品は六区にあるパリ国立高等美術学校の所蔵品の中から、ローマ賞絵画とそれに関連する作品、油彩画43点とデッサン20点の合わせて63点である。
パリ国立高等美術学校は17世紀中葉にアカデミーの教育機関として創設され、アカデミーの理念―古典を範とした理想美を追及する古典主義―を普及するための重要な役割を果たした。その美術学校で年一度行われる最大のコンクールとして、大きな関心と注目を集めたのがローマ賞であった。寛文3(1663)年から始まり昭和43(1968)年まで300年以上も連綿と存続しており,現在でも形は変わったもののこの伝統は引きつがれている。厳格な規定に則った実技選考を行い同規格の歴史画を最終審査対象としたものであった。大賞受賞者は殆どが25歳までという若き才能で、報奨として政府給付によりローマのヴィラ・メディチにあったフランス・アカデミーに5年間留学し、帰国後はアカデミーを担う芸術家として将来を嘱望された。
出品作品は膨大なローマ賞大賞受賞作品の中からもっとも充実していたフランス革命後の寛政9(1797)年から第二帝政時代の文久1(1861)年までの時期を取り上げたものである。展覧会の構成は代表的な作品や特徴的な作例を取り上げるものではなく、一つの区切られた時代をそのまま提示するという方法である。このローマ賞絵画は一定の基準によって描かれた一連の作品として、年毎の変化は微妙であるにもかかわらず長い年月を通してみることで19世紀という時代精神を明確に示している。
アカデミーの画家は“アカデミズム”という蔑称とともに最近まで、一部の画家を除き著しく低い評価を受けており、作品も一般には殆ど見ることができなかった。またローマ賞も一般に馴染みのあるものとは言えないが、近年のアカデミーの再評価とともに注目を集めるようになった。その意味で時宜を得た展覧会であったと言える。

展覧会情報

会期 1989年10月17日(火)~1989年12月3日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日10月23日(月)・30日(月)・11月6日(月)・7日(火)・12日(日)・13日(月)・20日(月)・24日(金)・27日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館 パリ国立高等美術学校
後援 読売新聞社 フランス大使館
展覧会図録

展覧会図録

完売