特別陳列

村林忠 写真展 1932-1987

2004年2月8日(日) ~2004年3月14日(日)

村林忠(明治36(1903)年-昭和53(1978)年)は、まだ広く知られてはないが、写真に対する高い志と類まれなる技術力をもった写真家だった。村林家ご遺族は、これまで当館で開催してきた「写真芸術の時代」(平成10(1998)年)、「石田喜一郎とシドニーカメラサークル」(平成14(2002)年)の調査に協力していただいた関係者で、福原信三のプリンターとして戦前に親しく福原に師事した村林忠その人の作品の調査を始めた機縁もそこにあった。戦前に渋谷区在住だった村林を、渋谷区ゆかりの作家として紹介し、この作家の初めての総合的な展覧を開催することができた。
銀塩写真の制作技術は、いまや衰退または消滅の危機にある。村林の銀塩写真プリントは、技術的にも表現力においてもきわめて高い水準にあり、今日、その作品の存在意義は高まっている。出品したプリントの展示効果には特筆すべきものがあった。また、生涯を通じて遮光の風景を撮影し、ことに戦後の工業地帯の開発風景をとらえた一連の作品は、高度成長期に向かう日本の原風景ともいえる叙情性と現代的でシャープな造形性を備えており、この時期の日本の風景写真を代表するものといってよい。
無料入館時期の、地味な展覧であったにもかかわらず、好評であった。今後の再評価を期待したい。
なお、本展出品作はご遺族からの寄贈を受け、当館所蔵品となった。

展覧会情報

会期 2004年2月8日(日) ~2004年3月14日(日)
入館料無料
休館日2月9日(月)、16日(月)、23日(月)~3月1日(月)、8日(月)
前期:平成16(2004)年2月8日(日)~22日(日)
 併催 2004松濤美術館公募展
後期:平成16(2004)年3月2日(火)~14日(日)
 併催 第22回渋谷区小中学生絵画展
展覧会図録

展覧会図録

完売