〈具体〉未完の前衛集団

―兵庫県立近代美術館所蔵作品を中心に―

1990年4月10日(火)~1990年5月27日(日)

戦前から活躍していた画家・吉原治良の周辺に、戦後、若い意欲的な作家たちが集まり、彼に師事するグループが形成される。これが昭和29(1954)年に「具体」と名乗り、具体美術協会が発足することとなる。以後、彼らは機関誌『具体』の発行、「真昼の太陽にいどむモダンアート実験展」、東京および関西での「具体展」の開催、「舞台を使用する具体美術展」など、グループとして新鮮な活動をめざましく展開する。アイデア溢れる発想、卓抜な宣伝力、めまぐるしいまでの活動の内に、具体は海外進出をも果たし、各国で支持を受けた。
当時の日本は、戦後の精神的な混乱の後に、作家たちは大小のグループを結成し、新しい価値と活動の方法を探求した時期にあった。シュルレアリスムをはじめ海外の美術の動向や、社会的な問題意識がクローズアップされるなかで、具体は「絶対に人の真似をしない」を合い言葉に、それらを乗り越えた視点を持ちえたのだと言える。
昭和47(1972)年に解散されるまで、具体は様々な局面を迎えたが、今回は、その最も創造的な時期である1965年までの初期に焦点をあてた。旧山村コレクション25点を含む兵庫県立近代美術館の所蔵作品を中心に、代表的な18作家の絵画・立体作品55点を展示し、ビデオ・記録写真などの豊富な資料を加えて、具体初期の活動を概観できる内容とした。また、会期中、座談会で作家・評論家がともに具体の意味を回顧する場を得、さらに映画会で当時の実験映画を放映することができたのも、展覧会の意義を高めた。
近年いくつかの海外展に出品し、再評価が急激にすすんでいる具体は、関東では長く展覧の機会がなかった。よって多くの関心を呼び、あらたな評論活動の発端となったことを付け加えておく。

展覧会情報

会期 1990年4月10日(火)~1990年5月27日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日4月16日(月)・23日(月)・5月1日(火)・2日(水)・7日(月)~10日(木)・14日(月)・21日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
協力 兵庫県立近代美術館
展覧会図録

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完売