版画に見るジャポニズム

―アメリカ・ジマーリ美術館所蔵―

1990年6月12日(火)~1990年7月22日(日)

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19世紀中葉から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパでは、産業革命の進展、中産階級の台頭など社会の激しい変化に対応して、印象派、後期印象派、アールヌーボーなど新しい様式を掲げた美術運動が次々と興った。旧来の伝統的なモチーフ、様式にあきたりず新しい芸術を模索していた画家や美術家達の中から、当時、商品として、あるいは万国博覧会を通してヨーロッパに大量に輸入され始めていた日本の美術工芸品の新鮮な美しさに驚き、日本美術に深く心酔する人々が多く現れた。彼らは日本美術の持つ平明さ、大胆さ、繊細さ、装飾性に新たな芸術創造の活路を求めたのであった。フランスの美術批評家ビュルティによって“ジャポニスム”と命名されたこの日本文化に対する強い関心とその受容は深く静かにヨーロッパ社会に浸透したのである。
当時のヨーロッパ社会では、交通、商業の発達、文化の大衆化などにより、ポスター、カレンダー、印刷物や雑誌の装丁、挿し絵、室内装飾などのグラフィック・アートに対
する需要が急速に増大した。これらのグラフィック作品制作に積極的にかかわったアーティスト達は、当時、彼らを魅惑していた日本の美術工芸品の中でもとりわけ浮世絵の持つ斬新な非対称の構図、明るく強い色面、抑揚のある精緻な線、写実的であると同時に大胆に単純化されたモチーフ、などの諸特質に強く影響され、それらを摂取、応用して独自の新しい作品を生みだしていった。
アメリカ・ニュージャージィー州にあるラトガース大学に設置されたJ.V.ジマーリ美術館は国際ジャポニズム研究センターとして知られている。本展は、同館が所蔵するヨーロッパのジャポニスムの作品の中から、リトグラフ、エッチング、木版画などの版画作品を中心に、水彩画、パステル画、写真などのグラフィックアートに焦点を合わせて、19世紀後半に活躍したフランス人作家71人による154点の作品を紹介した。日本初公開の珍らしいグラフィック作品に影響を与えた浮世絵を並べて陳列し、影響関係がよく分るように展示した。ジャポニズムの関心が高まっている折、大きな関心を呼びおこした。

展覧会情報

会期 1990年6月12日(火)~1990年7月22日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日6月18日(月)・25日(月)・7月2日(月)・8日(日)・9日(月)・16日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売