現代の版画1990

1990年8月7日(火)~1990年9月16日(日)

この企画は版画のもつ特有の表現をとおして、現代の美術に発言しようとしている作家を紹介することを目的に始められたものである。版画という表現メディアが美術のなかで不可欠な要素の一つとして認識される状況をふまえ、同時代の関係のなかで捉えることにより、版画の位置を確認し、その意味と可能性を見定めようとするものである。およそ3年毎の開催を予定しており、昭和62(1987)年に第1回展をおこない、今回はその第2回目である。
本年は他の美術館でも版画に関わる展覧会が多く開催され、版画に対する注目度の大きかった年であった。前回の第1回展の時の停滞気味の版画の状況とは明らかに異なっていた。それは、版画の表現が現在新たな展開をみせているということの証左であり、それゆえ多くの重要な問題点が浮彫りにされたと言えよう。
本展にみられた特徴は、写真を使用した版画の多さとその独自性の追求、または写真そのものの提示であった。また、ペインティングとの併用やNECOプリントやゼロックスという新規な技法による作品とインスタレーション的な方法を流用した展示も特筆すべきであろう。さらに全体を通じて画面が大型化しているのも近年に共通した特徴であった。ジャンルの境界が曖昧になってきた今日の版画表現を端的に示す展示となったように思われる。
出品作家の選択と受賞作品の選定は前回と同様に、小倉忠夫、木島俊介、桑原住雄、藤井久栄、三木多聞、藤田國雄の6名からなる選定委員会に委託した。
出品作家は秋岡美帆、池田良二、磯見輝夫、井上厚、遠藤竜太、大浦信行、岸中延年、北辻良央、小枝繁昭、越谷賢一、小山愛人、高原洋一、田中孝、出店久夫、永原ゆり、林孝彦、筆塚稔尚、山口啓介、山本容子、若月公平の20人の作家であり、49点の作品の出品があった。
なお、松濤美術館賞には山口啓介の「水路―王の方舟」が、優秀賞には岸中延年の「Spring into View 90-5」が選ばれた。

展覧会情報

会期 1990年8月7日(火)~1990年9月16日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日8月12日(日)・13日(月)・20日(月)・27日(月) 9月3日(月)・9日(日)・10日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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価格:1,300円

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