19世紀の初頭から世紀末にかけてのヨーロッパの芸術家はオリエント(イスラム教文化圏)に対し強い興味を覚え、祈りの情景、オダリスク、アラブの騎士たち、広大な砂漠を行く隊商などオリエント世界への憧れを主題に作品を作りあげた。いわゆるオリエンタリズム絵画の出現である。この背景には、当時のヨーロッパ列強諸国の政治的、経済的な関心が強く働いていた。遙かな異国の地への憧憬を胸に自らオリエントへ旅立ったロマン主義の画家ドラクロワが、北アフリカの光の下で色彩家としての本領を見いだしたことは周知の通りだが、当時の多くの画家が色彩と官能性に充ちた世界を求めて夢のオリエントを訪れ、異国情緒にあふれた作品を描いていった。そして、アカデミズム絵画の中においても、オリエンタリズムは主要なモチーフとして定着してもいったのである。
本展は、東方の風物をテーマとした絵画作品50余点とオリエンタリズムの普及に大きな役割を果たした19世紀の写真60余点、そして、同時代の美術状況の中でのオリエンタリズムを位置付けるために、フランス・アカデミズムの画家たち、印象派に連なる風景画家たちの作品など40余点を陳列した。又、併せて、写真部門では、現代の写真家がオリエンタリズムに挑んだ作品30余点を陳列した。
近年、欧米で学問的にオリエンタリズムが研究されているが、日本でも旧来のイスラム世界観をみつめなおす契機になった展観と思われる。
展覧会情報
会期 | 1990年10月2日(火)~1990年11月25日(日) |
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入館料 | 一般200円 小・中学生100円 |
休館日 | 10月8日(月)・11日(木)・14日(日)・15日(月)・22日(月)・29日(月) 11月5日(月)・6日(火)・ll日(日)・13日(火)・19日(月) |
主催 渋谷区立松濤美術館
協賛 フジパン・富士カントリーグループ |
展覧会図録
完売