特別陳列

熊谷コレクション 和更紗展

2012年2月5日(日)~2012年2月19日(日)

「更紗」は16世紀の印度に生まれた木綿の染色品である。生命の樹を中心に様々の草花や鳥獣を配した紋様にその特色が有る。日本へは、桃山から江戸初期にかけてオランダ東印度会社によりもたらされ、大名や茶人、富裕な町衆に垂涎のものとなった。武士は陣羽織等や武具に用い、茶人は仕覆や袱紗に用い、その端切さえも煙草入れなどに用いられるほど愛好された。鎖国時代に入っても長崎経由で阿蘭陀商人によりもたらされ、将軍家への献上品とされた。こうした輸入更紗は「古渡り更紗」と称されている。この舶来の更紗は庶民には手の届かぬものであったために、その紋様を模倣し、更に日本的美意識を加味した更紗が作られるようになった。古くは16世紀に鍋島潘の保護の元に作られた鍋島更紗の記録が残されている。17世紀には日本各地で木綿の生産が行われ、また、この頃に広く行われ始めた型紙を用いた捺染技法を援用した日本独自の「型摺り更紗」の技術が開発され、和更紗が誕生することになった。江戸中期以後、型染めの長所を生かした連続紋様や幾何学的紋様がうまれ、花鳥紋や人物紋などにも和風のあじわいが加味され、富裕層から庶民にまで広まっていき、和更紗は絶頂期を迎えた。明治期に入り、化学染料や安価な紡績捺染が普及することで、和更紗は衰退していった。
本展では、装丁家として活躍される熊谷博人氏の収集された和更紗を約100点陳列し、江戸期の日本染色の中で光彩を放った和更紗の魅力を紹介した。
会期中には熊谷氏によるギャラリートークも行われ、好評を博した。

展覧会情報

会期 2012年2月5日(日)~2012年2月19日(日)
入館料無料
休館日2月6日(月)、13日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 2012松濤美術館公募展