恩地孝四郎

1982年7月7日(水)~1982年8月15日(日)

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日本創作版画の父、恩地孝四郎は明治24(1891)年に生まれ、昭和30(1955)年に亡くなった。日本には元々江戸時代から続く浮世絵版画の伝統があったが、恩地孝四郎は敢えてこの呪縛を解き、先ず創作方法を変え、それまでの浮世絵版画が画師、彫師、刷師三者の共同作業で行なわれていたのを全て一人で行なうようにした。次にその画題を浮世絵版画に多く見られる風俗的なものから、自己の内面に鋭く突き刺さる感情、苦悩、喜び、悲しみといったものの重視に傾け、その内容も一種のロマンチシズムを濃厚に漂わせる表現、非常に抽象的、幾何学的なものに向かい、いわば日本の近代の足跡を明確に残した人となる。原色の強い浮世絵版画を見慣れた人々にとっては、くすんだ中間色のデリケートな重なりの多い恩地孝四郎の版画は理解しにくく、大衆的人気を勝ち取るにまでは至らなかったが、芸術の真髄に眼を見開いていた一部の人々から圧倒的な支持を受けていた。事実その生活は版画だけでは苦しく、その溢れる才能を本の装丁などに向け、その分野で生活の資を得ていた時期もあった。この陳列ではそれらの装丁本、その他、油絵、彫刻、オブジェなども加え、恩地孝四郎の全貌を捉えた。とにかく様々な技法による版
画が試みられる昨今、主に木版で日本の版画芸術に新たな一ページを加えた恩地孝四郎の芸術に触れることは、大変有意義なことで、パイオニアとしての苦しみ喜びの大きさ深さに胸打たれることとなろう。

展覧会情報

会期 1982年7月7日(水)~1982年8月15日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日毎週月曜日(ただし、第2週のみ日曜日)祝日の翌日及び年末年始(12月29日~1月3日)
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 特別陳列 渋谷区在住作家の作品
展覧会図録

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完売