橋本コレクション

十八世紀の中国絵画

―乾隆時代を中心に―

1994年4月6日(水)~1994年5月22日(日)

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小館はこれまで、5回にわたり橋本コレクションによる中国絵画の展観を行ってきた。
今回のテーマとした18世紀は、清朝の康煕帝の末年から雍正帝をはさみ、乾隆帝の時代にほぼ相当する。秦の始皇帝以来、歴朝に多くの皇帝が現れたが、満州族という異民族の生まれにもかかわらず、中国史上最も傑出した皇帝に数えられるのがこの3人である。この3人の皇帝の統治下にあって、清朝は、当時の欧州諸国を凌駕する未曾有の繁栄をしめしたのは周知の如くである。18世紀は中国の時代であったといえよう。
政治的安定のもとに、経済的繁栄が築きあげられ、その経済力を背景に清朝文化は爛熟の時代を迎えた。その典型を塩都として栄えた揚州に見ることができる。塩の取り引きを基として富を築いた揚州塩商は、名画や図書をあつめ、学者や芸術家を庇護したために、全国各地から揚州に文人墨客が集まり、揚州は学芸の中心として確固たる地位を築いたのである。
しかし、嘉慶帝以後、反乱の頻発やそれにともなう国家財政の悪化などにより、清朝は急速に衰退をみせ、道光帝の時代、阿片戦争に破れて以後、帝国主義諸国の蹂躙を許すことになっていき、揚州もまた、急速に学芸の中心の地位をすべりおちていったのである。
本展では、清朝全盛時代の乾隆年間を中心に、前後する康煕、雍正、そして嘉慶、道光の絵画を陳列し、正統派、宮廷画家、在野の揚州八怪、さらには近世日本絵画の成立に大きな貢献をした来舶画家の作品などを陳列し、中国古典絵画の終焉までの奇跡をたどった。先に開催した、「中国近現代絵画」「明末清初」の間に位置づけられる作品群である。橋本コレクションの主要な作品の紹介は、中国絵画の歴史的展開の意味では、一応の完結をみたといえよう。今後は、更に主題をしぼっての陳列を試みたいと考える。

展覧会情報

会期 1994年4月6日(水)~1994年5月22日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日4月10日(日)・11日(月)・18日(月)・25日(月) 5月2日(月)・8日(日)~12日(木)・16日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売