残された楽園

ネイチャーフォトグラフィー

1994年6月8日(水)~1994年7月17日(日)

本展では動植物、海洋生物、先住民族などのジャンルにおいて世界のジャーナリズムの第一線で活躍する10名の写真家による206点の写真を展示した。
出品作家は各国におよび、日本からは海洋生物に魅せられた伊東勝敏、ダイビングとともに海中の撮影をおこなう大方洋二、日本の野性生物や穏やかな四季の織りなす自然を撮り続けている久保敬親、南米からアフリカ大陸まで辺境の地にカメラを向ける関野吉晴、アラスカに住み人間、自然、動物をこよなく愛する星野道夫、昆虫写真家として世界を駈ける松香宏隆、また米国からは個人では困難な大がかりな海中写真に挑むビル・カートシンガー、海洋生物とりわけクジラ撮影の第一人者といわれるフリップ・ニクリン、プレーリー地帯や北極圏、インディアンなどを精力的に撮り続けるジム・ブランデンバーク、さらにオランダから数多くの先進的テーマを手掛け優れた独創的なカメラアングルをもったフランス・ランティングを選んだ。
ここ10年くらいのうちに自然を対象にした雑誌が出版されるなど、年をおうごとに自然や環境について関心が高まっている。地球規模での自然破壊、公害問題が深刻化し、平成4(1992)年に開催された地球サミット以降、人間と自然の共生が重要なテーマとなってきている。私たちが体験できる自然環境、動植物は日常生活の中に身近な都市環境のなかにある。それは順応した姿として見落としがちであるが大切な自然の一部でもある。さらに、私たちがほとんど体験できない自然環境もある。海中深い生物の生態、極北の生活や自然、人跡未踏の密林の奥地などである。また、そういった地理的な条件だけでなく僅かな瞬間しか姿を現さない時間的な条件もある。
写真家たちはそうした私たちの体験できない自然環境を、写真という装置で具さに眼の前に提供してくれる。それらは疑似体験ではあっても遠い場所も出来事もまさに一目瞭然とする事が出来る。自然の美しさ、不思議さ、たくましさなど、地球に生きる物の本来の姿―残された数少ない楽園の存在を認識できるだろう。そこから私たちは自然にたいしていかなる視点をもちえるのかが試されていると言えるだろう。

展覧会情報

会期 1994年6月8日(水)~1994年7月17日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日6月12日(日)・13日(月)・20日(月)・27日(月) 7月4日(月)・10日(日)・11日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館 東京新聞
企画協力 アニマルズ・アンド・アース
後援 環境庁
協賛 オリンパス オリンパスカメラクラブ
展覧会図録

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完売