フランスの肖像

―ルノワール、ピカソ、マン・レイからバルテュスまで―

1994年8月3日(水)~1994年9月18日(日)

像は命に限りある人間の姿を写し、とどめ、残したいという基本的な欲求から生まれたもので、古くから時代の権力者や特権者の肖像が作られ、モニュメントやシンボルとして社会的に機能してきた。
しかし近代になり、フランスで革命が起こって市民階級が台頭してくると、肖像はもっと広い範囲の、大衆的市民が持ちうるものとなった。写真が発明されると、絵画や彫像以外の、もっと簡便な肖像を得ることが可能となり、肖像はますます多数作られるようになりえた。この時代は、人の姿を写すという造形芸術のひとつの機能が大きく状況を変えたため、絵画や彫刻が写実的な役割から放たれて、様々なスタイルを生み出していくことになる、変革期の始まりとも重なっている。
本展では、こうした19世紀後半の変革期以降のフランスに的をしぼって、肖像画や肖像彫刻の多様なる展開を紹介した。フランス各地の美術館、個人コレクションから珍しい作品も多数出品された。約100年間にわたる、油彩画、彫刻のみならず写真、オブジェ、ビデオなどフランス現代美術の最新の成果を含んだ、多様な分野の作品約100点を、時代順や様式別などにとらわれない、内容に従った展示方法で紹介することにした。展示は、正面像、側面像、背面像といった人物の向きや、正統的女性像と悪女の像といった道徳性、自画像、集団肖像、権力者像、家庭人の肖像などの公共性といった面から構成され、最後に死者の像を掲げて、肖像が人間の死と深く結び付いた芸術であることを示すものである。
猛暑の中を多数の入館者が訪れ、話題を呼んだ展覧となったが、アンケートによると従来的な方法と異なる展示方法について賛否両論もみられた。こうした議論を含めて、今までに例のない展覧内容を提示できたことは意義深い試みだったといえよう。

展覧会情報

会期 1994年8月3日(水)~1994年9月18日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日8月8日(月)・14日(日)・15日(月)・22日(月)・29日(月) 9月5日(月)・11日(日)・12日(月)・16日(金)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売