この展覧会は、渋谷区在住の岡崎智予氏が多年にわたり蒐集された櫛・簪などの髪飾りの中より、江戸期のものの二百数十点を選び陳列したものである。
所謂日本髪は、江戸時代にその型ができ、その間に、幾多の流行・変遷が見られた。それらは、基本的には前髪・びん・たぼ・髷などから構成され、これらの部分が統一されて美しさを示すものであった。
この統一美に一役買ったのが櫛であり、簪であった。古代には宗教的意味すら持って使用された櫛・簪は、江戸時代には実用品、そして装飾品として、女性の髪を飾ったのであり、日本髪という制約のある髪型の中に、個々の女性の個性を表現するのに重要な役割を示したのである。いいかえれば、江戸女性の趣味性を最も端的に表わすのが、櫛・簪であった。
これら櫛・簪は、風俗資料として貴重であることは勿論であるが、工芸品としても優れている。木・金属・象牙などの材質に、蒔絵・螺鈿・象嵌・透かし彫りなどの装飾技法を施し、花鳥草木・風景・人物さらには南蛮風物などの種々の意匠が、可憐な形の中に描かれている。作者として、光琳に始まる琳派の原羊遊斎・中山胡民、御用蒔絵師の古満家・梶川家などの名があげられるほか、無名の工人の優れた造形感覚と技を見ることができた。
展覧会情報
会期 | 1982年9月7日(火)~1982年10月24日(日) |
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入館料 | 一般200円 小・中学生100円 |
休館日 | 毎週月曜日(ただし、第2週のみ日曜日)祝日の翌日及び年末年始(12月29日~1月3日) |
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 特別陳列 渋谷区在住作家の作品 |
展覧会図録
完売