映画伝来

―シネマトグラフと〈明治の日本〉―

1995年12月5日(火)~1996年1月21日(日)

明治28(1895)年12月に、パリでリュミエール兄弟が映画を初公開してから、ちょうど百年目にあたる平成7年度、映画生誕百年を記念する各種事業が開催された。本展もその一環にあたり、リュミエール社の映画と、日本との係わりについて実証し、考察する展覧会として企画された。スクリーンに映る、動く映像は、当時シネマトグラフと名づけられ、盛んに輸出されていた。これが日本に渡って人々の評判をとったのは、世界初公開から1年余り後の明治30(1897)年2月、大阪・南地演舞場を皮切りとする。同時に、フランス人技師により日本の風物もシネマトグラフに撮影されて、日本映画が作られたのである。
その当時の短いフィルムが33編現存しており、これをまとめて〈明治の日本〉と題し、今回ビデオ上映した。大阪・南地演舞場の内部を模したスクリーンセットに〈明治の日本〉を映写するほか、南地演舞場で初公開されたプログラムの再上映も行った。加えてリュミエール社の初期映画、日本人の手による初期日本映画のビデオ上映も合わせて行った。
さらに、初めて日本に渡ったシネマトグラフの技師コンスタン・ジレルの写真や手紙と、明治31(1898)年に来日した同技師ガブリエル・ヴェールの写真・書簡などの新発見の資料を展示した。二人の撮影した映画や、旅の資料から、帝国主義の世界を映画がどのようにめぐり、何を映し出してきたかがうかがわれる。
これらの映画草創期のフィルム、資料と合わせて、初期映画の題材について考察するセクションをも設けた。海外を旅して撮影された初期映画には、各地の街頭風景、農業などの労働、食事のような風俗、そして芸能が重要なテーマであった。これらの主題が映画に先攻するメディアである絵画、書籍、写真などにどのようにとらえられていたかを比較対象として提示し、異文化との接点として、映画の伝来を考える一助とした。
当時はフランス・リュミエール社のシネマトグラフの他に、エジソン発明のアメリカ産映画も多数輸入されており、両者の関係は錯綜していたが、本展ではエジソン側の映画には触れなかった。映像の展示は美術展示と時間・空間面で異なっており、今回も工夫を試みたが、今後とも課題にしたい。

展覧会情報

会期 1995年12月5日(火)~1996年1月21日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日12月10日、11日、18日、25日、26日、29日-1月3日、1月8日、14日、16日
主催 渋谷区松濤美術館 朝日新聞社
後援 映画生誕百年祭実行委員会 フランス外務省 フランス大使館
助成 国際交流基金 芸術文化振興基金
協賛 稲畑産業株式会社 資生堂 コニカ株式会社
協力 リュミエール兄弟協会 フランス国立映画センター
   リュミエール研究所 松下電器 日本航空
展覧会図録

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価格:2,200円

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