版画の1970年代

1996年6月11日(火)~1996年7月21日(日)

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本展は1970年代に制作された、およそ60名の作家による版画作品を120点ほど展示し、多くの作家が版画に目を向けていた「版画の1970年代」の展開を見ようとするものである。
1970年代におけるわが国の版画状況は、戦後のめまぐるしい変遷の中でも特徴的な時代であった。単に技法や表現が多彩だったというだけでなく、その後の方向をも示唆する大きな変化が認められる。この時期、画家はもちろんデザイナーや彫刻家などさまざまなジャンルの作家が、積極的に版画を制作するようになり、版画にとって新たな意味が付加されるきっかけとなった。
版を使う版画といっても、その制作過程では描くという要素も多分にあり、それを根底におきながら版画は成り立っていた。しかし、この時期にはその描くことを極端に省く作品が現れる。描くことに替わるのが、刻む・刷るという方法を行為として認識し、版画というジャンルが持つ意味や制作プロセスの構造を解きあかそうとすることと、映像のもつイメージを引用・記録し表現を展開することであった。
その背景には、時代の美術に呼応する技法と表現を獲得したことが大きな要因であったといえる。このような版画の方法を追究することで、版画は実験的な作品をうみだし、また他のジャンルにも影響を与え、新しい価値を作り出した。本展をとおして、この時期の版画の特質がどのようなものであったかを改めてみる機会となったことと思う。

展覧会情報

会期 1996年6月11日(火)~1996年7月21日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日6月17日(月)・24日(月)・7月1日(月)・8日(月)・14日(日)・15日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売