19世紀のヨーロッパの染織・デザイン

―亀井茲明コレクション―

1982年11月16日(火)~1983年1月23日(日)

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「亀井コレクション」は、旧津和野藩主亀井茲明伯爵が、主にドイツで蒐集された六千余点の染織・図案の集大成である。
亀井伯爵は、明治中期にイギリス、後に、ドイツへ留学し、当時の日本人としては珍らしい美学美術史を学んだ。帰国後は、自ら建築の設計、「美術論」の執筆などを行い、美術界に於けるその後の活躍が期待されたが、日清戦争従軍後、36歳で夭折した。
亀井伯爵が留学された頃のヨーロッパは、産業革命の進展、中産階級の胎頭など数々の社会変革が起り、それまで富裕層に独占されていた高価な染織品が、一般市民層の需要にも答えて大量に生産されるようになっていった。植民地からの安価な原料輸入、織機の改良捺染機、人工染料の発明などが、それを可能にしたと同時に、オリエントのカーペット、東南アジアの更紗などの文様をヨーロッパのデザインの中に混合、消化して、次々と斬新で活力溢れるデザインがフランスを中心に産み出されていった。
現在、非常に貴重な資料となったこれらの染織・デザイン蒐集に着眼した亀井伯爵の先見性と、質のよい作品を選び抜いた識見の高さが窺われる。これらの染織品は、亀井伯爵のヨーロッパでのもう一つの蒐集品、美術図書と共に、現在、東大図書館に所蔵されているが、それらの中から染織、壁紙、デザイン画、捺染布等計142点、貴重図書19点を陳列した。加えて、自筆油絵、カメラ等も合わせて展示し、亀井伯爵の活動の全貌が窺えるよう配慮した。
今回の企画は、テレビにもとり上げられ、女性層、デザイン関係者を中心に、全国的な反響を得た。
今日のデザインの繁栄の直接的な礎となった19世紀ヨーロッパの染織、デザインの華麗にして多様な広がりと豊さを、再認識する好機となったことと思われる。

展覧会情報

会期 1982年11月16日(火)~1983年1月23日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日毎週月曜日(ただし、第2週のみ日曜日)祝日の翌日及び年末年始(12月29日~1月3日)
主催 渋谷区立松濤美術館
共催 社団法人霞会館
併催 特別陳列 渋谷区在住作家の作品
展覧会図録

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完売