イギリス工芸運動と濱田庄司
― 工芸家たちのユートピア1900s-1930s ―
1998年4月7日(火)~1998年5月24日(日)
この展覧会は、濱田庄司とバーナード・リーチを軸として、1900年前後から30年代までを中心にイギリス工芸運動の動向をとらえ、日本の民芸運動のひとつの精神的な原点をみようとするものである。
大正9(1920)年、濱田庄司はバーナード・リーチの強い誘いに従って、イギリス西南端の港町セント・アイヴスを訪ね、二人は協力してこの地に日本式の登り窯を築き、繊細で美しい作品を数多く制作する。
当時のイギリスは、画家、彫刻家、工芸家たちが都市の喧噪から離れて、芸術家村(コロニー)や工芸家集団(ギルド)を形成し、多彩な活動を展開していた。濱田はセント・アイヴスとディッチリングの美術家・工芸家たちのくらしぶりに強く影響を受けて大正13(1924)年帰国するや、間もなく終生の活動の拠点を益子に定める。彼は田舎暮らしのなかで工芸とともに理想の暮らしを追求することになる。さらにこれと前後して、柳宗悦、河井寛次郎らと「民芸」を提唱しのちにこれは大きな工芸運動へと発展する。ウィリアム・モリスから西欧社会に始まった工芸を核としたユートピア思想は1920年代には西欧各地に波及してゆく。そうした世界的規模の現象のなかで日本の民芸運動が起こり、それは、イギリスの工芸運動とも大きな接点があったことが改めて検証された。
イギリスと日本両国に残された作品を集め、東西をまたぐ工芸作品が展示されるというまたとない展観となった。濱田庄司やバーナード・リーチの陶器などをはじめとして、ウィリアム・モリスのケルムスコット・プレスによる装丁本、チャールズ・R.アシュビーの装飾品や原画、エドワード・ジョンストンの文字デザイン、デイヴィッド・ジョーンズの絵画、エセル・メイレの染色品、さらには六世尾形乾山や河井寛次郎の陶器、黒田辰秋の木工品、柳宗悦の民芸運動の資料や濱田の愛したイギリス家具など約200点を展示する幅広い構成であった。
展覧会情報
会期 | 1998年4月7日(火)~1998年5月24日(日) |
---|---|
入館料 | 一般300円 小・中学生100円 |
主催 渋谷区立松濤美術館 東京新聞 |
展覧会図録
完売