当館に寄託されている橋本コレクションは、大阪府高槻市にお住まいであった故橋本末吉氏が収集された中国絵画及び書跡約800点からなる。橋本氏は、慶応義塾を卒業後、大蔵省に入られ、その後アルコール専売の社長を務められるなどした方で、学生時代より美術品収集に関心を持たれ、茶道具、古銭あるいは国焼きの陶磁器などを収集したが、最後にもっとも強く興味を抱かれ、中国絵画の収集に専念された。橋本コレクションの内容は、明代以後の中国の絵画及び書であり、これまでの中国絵画の鑑賞が宋・元絵画を中心としていたことと一線を画している。特に、明代の宮廷画家を多く輩出した浙派、江戸時代に来日し日本近世画壇の形成に大きな影響を与えた来舶画人、近現代の画家など従前あまり重視されなかった作家の作品に強く関心を寄せられ、その収集は極めて充実している。また、画史には大きく名を留めない画家の作品の収集にも努められた。
橋本氏は、その収集を私蔵することなく、多くの研究者に門を開いた。関西在住の研究者は勿論のこと、東京などの各地の研究者、さらには中国・台湾・欧米等からも多くの研究者が橋本家を訪れ、多くの作品を見る機会を与えられ、その研究を発展させていった。同時に、中国絵画に興味を持つ多くの人が橋本家を訪れ、橋本氏のお人柄に惹かれ、中国絵画収集の道に進まれ、橋本氏の助言を受けながらその収集を充実させていった。書家、大学教授、実業家など職業は様々だが、一様に橋本氏のお人柄を慕い、橋本氏と同じく中国絵画を楽しまれた。その収集は、必ずしも伝世の名品ばかりというわけではないが、それぞれの収集家の感性により選ばれた作品であり、収集家の思いが込められ、収集家の個性が現れているものばかりである。
本展では、橋本コレクションを中心として、橋本氏とともに中国絵画を楽しんだ方々のコレクション約130点を陳列し、併せて個々の収集家の方々より文章をいただき、中国絵画についての考えを伝えていただいた。
展覧会情報
会期 | 1998年6月9日(火)~1998年7月20日(月) |
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入館料 | 一般300円 小・中学生100円 |
休館日 | 6月14日(日)・15日(月)・22日(月)・29日(月) 7月6日(月)・12日(日)・13日(月) |
主催 渋谷区立松濤美術館 |
展覧会図録
完売