特別陳列

伊藤隆康

1985年8月20日(火)~1985年9月29日(日)

本展は、渋谷区に在住され、昭和60(1985)年2月に50歳の若さでガンのために逝った伊藤隆康の回顧展である。
伊藤隆康は、昭和9(1934)年に兵庫県明石市に生まれ、昭和33(1958)年に東京藝術大学油絵学科(小磯良平教室)を卒業した。翌34(1959)年、第1回個展で、石膏の中に荒縄・木の枝などを埋め込み表面をアンフォルメ風に整形した作品を発表、その中より5点をシェル美術賞展に出品し、第一席を授けられた。昭和35年(1960)年には第1回ACC展で第二席、昭和36年(1961)年にはパリ青年ビエンナーレ展などに出品のほか、丸善石油美術奨励賞展で佳作賞を受けるなどして新人として輝かしいデビューを飾った。それとともに、36年の第3回個展でプラスチックの製氷皿で作った石膏の半球体を無数に並べた白一色の作品を発表した。「無限空間」シリーズである。従来の絵画的手法からの離脱の過程は、ここにおいて一つの頂点を迎える。昭和38(1963)年の個展ではプラスチックのジョウゴを壁面に無数にならべ、翌39(1964)年の個展では「無限空間」シリーズの土管を発表。個展終了とともに削減するこれらの作品は、作品の永遠性を否定した所からスタートしたものであり、従来の芸術思想からの離脱を示すものであった。これとともに、アルミ鋳物によるトゲの出たオブジェ、そして、昭和42(1967)年には「負のシリーズ」と「同時に存在するシリーズ」を発表する。これらは、工場機械による制作であり、個人の行為の根跡を残さないという方法論にたったものであり、発注芸術として、また、「負のシリーズ」はライト・アートとしても先駆的なものであった。昭和45(1970)年に万博美術館に出品して以後、建築美術や都市空間のデザインに活動の場を広げ、近年にはアルミによる無限空間、シルクスクリーンによる無限空間を発表し、あわせてビデオ・アートの分野において顕著な活躍を示し始めていた。伊藤の死はこうした新たな展開の時であり、惜しまれてならないものがあるといえよう。
本展では、伊藤の第1回個展出品作から最新のビデオ・アートまで38点と併せて、「土管」などの作品を写真展示することで、抽象表現に絶えることのない実験を繰り広げてきたその全貌を紹介できたことと考える。

展覧会情報

会期 1985年8月20日(火)~1985年9月29日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日8月26日(月)、9月2日(月)、8日(日)、16日(月)、17日(火)、23日(月)、24日(火)
併催 特別展 メトロポリタン美術館所蔵 ジャクソン・ポロックの素描
展覧会図録

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完売