山口 薫

1982年11月16日(火)~1983年1月23日(日)

この展観は山口薫の作品93点を陳列した。
山口薫の代表的作品を軸に選定した。各時期の重要な作品、典型的な作品は殆んど選んだが、若干初期の作品が少ないのが残念であった。会期を前期、後期と二度に分けて陳列替えをし、可能な限りの作品を陳列した。死去した後の昭和44(1969)年の京都国立近代美術館、昭和50(1975)年の群馬県立近代美術館での大規模な回顧展には及ばないものの、油彩画68点、デッサン25点の陳列は初期の東京美術学校在学時から最晩年までの作品を網羅した、近年では系統的に見ることのできる貴重な展観であった。
初期の渡仏から自由美術家協会に参加した時期には「緑衣横臥婦人像」にみられるフォービックな大胆な色彩、筆触で力強い画面を創り、次第に抽象化していった生涯にわたる画業の骨子を作り上げた。戦後は「十和田紀行」「季節の哀歓―田圃と鳥―」「田園詩」といった盛期の代表作を次々に発表すると共にモダンアート協会を結成し、戦後美術の牽引車の役割を果した。晩年には「月と土産子」「金環色の若駒」など視点を地平線から高く天空に向けた作品が多くみられる。
平面を構成する色面、奥行を象徴する独特な菱形、空間感を表出する色彩、これらが一つに相俟って上昇する力に裏付けられ統一されている。
山口薫の芸術の特色は他の多くのすぐれた作品がそうであるように、その時代の一典型を示したことである。ヨーロッパの近代絵画の造形を日本的に消化し戦後のモダニズムを表現した。写実と抽象化の中を振幅し独自の叙情性を融合した作品は、その後の洋画界に多大な影響をもたらした。

展覧会情報

会期 1982年11月16日(火)~1983年1月23日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日毎週月曜日(ただし、第2週のみ日曜日)祝日の翌日及び年末年始(12月29日~1月3日)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売