アラベスク文様の世界

中近東・イスラムの祈りと幻想

2000年8月1日(火)~2000年9月24日(日)

中近東を中心に、西はスペイン、アフリカ、東はインドネシアまで拡大したイスラム世界は高度で多様な文化を展開した。イスラム教では原則として、人間や動物表現を禁じた為、アラベスクと呼ばれる、幾何学文様、植物文様を中心とした無限連続文様が著しく発達した。アラベスクとは原義はアラブ風のという意味で、狭義は幾何学的な唐草や蔦などの植物模様のことである。しかし、イスラム圏の模様の中で、人物、動物の図柄も巧みに装飾に取り入れられ、文様の構成要素として生き延びてきている。本展では、アラベスクをイスラムの装飾美術と広く解釈して、様々なジャンルの工芸美術作品の中から、人間描写をも含んだ装飾デザイン作品を多数紹介した。
並河萬里のイスファハン、トプカプ宮殿、アルハンブラ宮殿の写真約30余点で、イスラムの建築装飾を紹介した。本展は幾何学模様、植物模様の他に、これまで、日本で本格的に紹介されることのなかった文字模様に大きく焦点をあてて、紹介することとした。コーランを著したアラビア語は神の言葉として、神聖視、絶対視された。初期の力強いクーヒー体や優美なナスヒー体などと呼ばれる各種の美しい書体で描かれ、埋めつくされた文字装飾や、アラビア書道、ペルシャ書道の世界はイスラム芸術の中で長い伝統を有し、芸術の中でも最高の位置づけを得ている。
本展の中心作品はラスター彩やラジュバルディナ陶器、トルコのイズニーク陶器、タイルなどイスラム世界各地で展開した陶器、タイルを多数出品して、陶器約80点、タイル約80点を中心に、カーペット30数点染織品、金工品を多数加えて約200点で植物文様、幾何学文様文字文様の多彩なアラベスク模様の世界を鑑賞していただいた。
更に、二階、サロン・ミューゼでは、現代日本作家によるアラベスク関連作品を多数紹介した。イスラム美術やアラビア書道は今や、イスラム圏以外の世界にも広がりつつある。ラスター彩の輝きを現代に復興させた加藤卓男氏の陶芸作品20点、アラベスク模様やアラビア文字を独自の感性で漆芸作品その他に造形デザインした故・吉田左源二氏の作品約15点、アクリル絵具でアラビア書道を現代アートとして表現している本田孝一氏の作品5点など、日本的美意識でイスラム美術を融合展開した諸作品を合わせて紹介して、ダイナミックなイスラム美術の多様性と普遍性、現代性を認識していただいた。

展覧会情報

会期 2000年8月1日(火)~2000年9月24日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※65歳以上の方及び障害者の方は無料
※第二、第四土曜日は小中学生無料
休館日毎週月曜日
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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完売