細江英公の写真 1950-2000

2000年12月12日(火)~2001年1月28日(日)

細江英公は、世界でも最も知られた、日本の写真家のひとりである。昭和8(1933)年山形県で生まれ、幼少期から東京で育ち、東京写真短期大学に学び、一貫してフリーランスで写真を撮り続けてきた。
細江は肉体をオブジェのようにとらえ、粗い粒子のなかに鮮烈な性のドラマを描き出した初期の代表作《おとこと女》を昭和35(1960)年に発表する。このとき被写体となった舞踏の創始者・土方巽と再びコラボレーションを行い、日本の原風景とその亀裂を描き出した名作《鎌鼬》を昭和44(1969)年に刊行した。三島由紀夫を写したバロック的な耽美空間《薔薇刑》(昭和38(1963)年)と合わせ、60年代の細江の仕事は爆発的な新しい表現を写真の世界にもたらしたといえる。
70年代の細江は、高度に抽象化した男女の性の対話を《抱擁》(昭和46(1971)年)に結晶させたのち、アメリカを中心に海外へと発表の場を広げていった。国内外でのワークショップや写真のパブリックコレクションの形成に取り組むなど、幅広く活動するようにもなる。
ほぼ10年をかけてアントニオ・ガウディの建築作品にとりくんだ成果は昭和60(1985)年に《ガウディの宇宙》と題して世に問い、大きな反響を得た。また本展で初めて発表された新作《作品をめぐる人たち》では、50年の自らの写真家生活を回顧し、現在と過去を円環のようにつなぐ新しい時間性を写真のなかに導入しており、現在の細江は母校での教鞭をとるとともにますます活発な活動を続けている。
本展ではこうした写真家細江英公の全貌を多数のヴィンテージプリントで紹介した。とりわけ《鎌鼬》の1メートル四方のパネルは、昭和43(1968)年の個展以来久しぶりに展示したもので、圧倒的な迫力を放っていた。朝日新聞のすぐれた展評をはじめ、各写真雑誌に紹介され、300ページにわたるカタログも好評を得た。

展覧会情報

会期 2000年12月12日(火)~2001年1月28日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※65歳以上の方及び障害者の方は無料
※第二、第四土曜日は小中学生無料
休館日12月18日(月)・25日(月)・29日(金)~1月3日(水)・9日(火)・15日(月)・22日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館 共同通信社
協賛 日本油脂株式会社 富士フィルム株式会社
   フォト・ギャラリー・インターナショナル
展覧会図録

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完売